内容説明
現代数学を代表する分野、トポロジーを独力で創りあげた天才数学者が遺した、ポアンカレ予想。並みいる数学者たちがそれに立ち向かっては敗れ、いつしかそれは100万ドルが掛けられる難題とみなされていた。しかし経験と知識は蓄積され、100年が経ち、リッチ・フローという武器をひっ下げた、謎めいた数学者ペレルマンが大胆不敵な解答を示したが、数学界はさらなる激震に襲われる…知に汗握る出色の数学ノンフィクション。
目次
王にふさわしい偉業
ハエにわかってアリにわからないこと
技師は真実を究明する
ポアンカレへの褒賞
ユークリッド抜きの幾何学
ハンブルクからコペンハーゲンへ、そしてノースカロライナ州ブラックマウンテンへ
あの予想の意図
袋小路と謎の病気
高次元への旅
ウェストコースト風の異端審問
消える特異点、消えない特異点
葉巻の手術
四人組プラス2
もうひとつの賞
著者等紹介
スピーロ,ジョージ・G.[スピーロ,ジョージG.][Szpiro,George G.]
スタンフォード大学でMBAを取得、ヘブライ大学で数理経済学の学位を取得。現在はスイス系日刊紙の特派員をつとめる科学ジャーナリストにして数学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おせきはん
23
解決に102年を要したポアンカレ予想をめぐる数学者たちの物語です。数学の解説は私には難解でしたが、それでも高校までの計算問題や証明問題では気づかなかった数学の美しさ、奥の深さを時々、感じることができました。数学者たちの合理的とは思えない人間的なエピソードも楽しめました。2021/07/14
小太郎
14
積読本消化。NHKで見た「数学者はキノコ狩りの夢を見る」がとても興味深かったので買ってあった本。数学者のエピソードはすっ飛んでて興味深いものが多いです。この本の世紀の難問であった「ポアンカレ予想」を解析したロシアの数学者ペレルマン博士の話も勿論面白いんだけど(彼はフィールズ賞数学界のノーベル賞、ミレニアム賞これは100万ドルの副賞付き、を辞退した人)それに至る数々の数学者の壮絶なドラマが読ませます。トポロジー的なアプローチなどよく分からないところも多いけど人間ドラマとして秀作!2020/12/13
roughfractus02
5
ポアンカレが論文の長さを考慮して3次元多様体に関する定理までを書き、証明しなかったことから苦闘の100年が始まったと本書はいう。このことが示すのは、位相幾何での戦いが微分幾何で解決された点だけでなく、位相幾何で扱えば多次元での応用可能にもかかわらず、その基点の3次元の証明が困難を極めた点だろう。同相を量(全体量)で求めると球が一点で消失するイメージとなるが、比率(曲率)から求める場合3次元で優位な視覚イメージ自体が困難になる。数学者でも3次元人を捨てるのは難しく、それを捨てて解決した男は奇人扱いされる。2018/02/12
オザマチ
4
偉大な数学者たちの人生とは、なんとも波乱万丈ですね。彼らが研究を進めていく上での苦労と努力を覗くことができます。純粋に数学ばかり学んできた学者というのは少なくて、力学系・コンピュータサイエンス・経済学・量子物理学など、多様な分野に関わってきた人が多いというのはちょっと意外でした。その中には、鉱山で働いたり、教師として働いていたという人も…やっぱり一つの物事にかじりついちゃダメみたいですね。2012/12/16
mahiro
4
100%文系脳の私だが、たまにこんなのを読みたくなる。 トポロジー理論などやはり脳の端っこをハレー彗星の如く掠めて去っていったが、難題に立ち向かっていった数学者達の人生は興味深かった。子供の頃父に読まされた数学入門書『無限と連続』で決闘で世を去った数学者のエピソードが印象に残ったように… 決して帯の「これは現実の指輪物語だ」につられたわけではないです(^_^;) 2012/11/04