内容説明
20世紀に入って発達した数学を現代数学と呼ぶなら、その特徴は「モノからコトへ」と集約できる。この観点を一貫した先導役として、本書では学校の授業や教科書からはこぼれ落ちてしまう数学の生きた手触りを感覚的に味わっていただけよう。「無限にも大小がある」とか「コーヒーカップはドーナツだ」といった奇妙な表現の飛び交う現代数学は、本当はどんな貌をしているのか。数学に興味ある人必読の名作解説、待望の復刊。
目次
1 「モノ」から「コト」へ(現代数学のイメージ;代数方程式の解法についての構造主義的方法 ほか)
2 無限の算術・集合論(再び「モノ」的無限へ;果てしない無限の彼方 ほか)
3 柔らかい空間・トポロジー(近さの発見から位相空間へ;位置とつながり方の幾何学(1)―グラフ理論 ほか)
4 形式の限界・論理学とゲーデル(納得、説得と論理;論理の記号化 ほか)
5 現代数学の冒険(あいまいさの数学・ファジイ理論;複雑さの数学・フラクタル理論 ほか)
著者等紹介
瀬山士郎[セヤマシロウ]
1946年群馬県生まれ。東京教育大学理学部数学科卒業。現在、群馬大学教育学部教授。数学教育協議会副委員長。専攻は位相幾何学。数学の面白さをわかりやすく、1冊1冊趣向を凝らして説き語る解説書には定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
69
同じ無限でも、自然数と有理数は同数で実数はそれより遙かに多い。このことを証明したカントールの対角線論法は中学生でも解るような見事な手法で感心した。しかしそこから先の集合論はラッセルのパラドックスという難題に突きあたる。位相構造と開集合はレヴィ=ストロースの本で婚姻関係の解析に使われたらしいので理解したかったが、3回読んでも解らなかった。トポロジーも難しく、私に思い描けるのは単純なトーラスまでで、結ばれた穴を持つトーラスなど気が遠くなりそうだ。数理論理学は哲学の本で見たなあと思いつつ、入口辺りでギブアップ。2017/08/19
WATA
41
現代数学のエッセンスをまとめた本。無限、集合、トポロジー、数理論理学といった分野について、そのアイデアがなぜ生まれ、どう発展していったかを紹介している。小さな本のなかに様々な要素を盛り込んでいるため、1つ1つの説明はやや不親切。「はじめての現代数学」というタイトルは、わかりやすい入門書という意味ではなく、現代数学を学びたい人に分野の選択肢を与える本という意味なのかも。私は論理学に惹かれたので、その関係の本をもっと読んでみたい。2014/04/06
へくとぱすかる
39
小説を読むようには読めないけれど、数学の現代を紹介してくれる本。ついていけない個所があるのが残念だけど、むろん私のせいであります。高校までで教えてもらえる数学の世界と、連続しているようで断絶している、そこから先の世界をかいま見させてくれます。わたくし事ながら、この本のおかげで、「位相空間」という言葉の意味が、ようやく飲み込めたように思います。収穫です。集合と空間がこんなふうに関係づけられるとは意外でした。数学は自由だといいますが、理解を困難にするほどの自由さには、よい解説が必要なんだと思いました。2014/12/30
まつど@理工
21
厳密な証明を一行一行追いかけるのが数学理解の本質であるが、この本ではむしろ感性に訴え、感覚的に現代数学を納得してもらおうという主旨の本。ガロア理論、非ユークリッド幾何学、解析学の無限の扱い、集合論(対角線論法、連続体仮説、ラッセルのパラドックス)トポロジー(位相空間、グラフ理論、ホモロジー理論、ホモトピー理論、ポワンカレ予想)、論理学とゲーデル、ファジー理論、カタストロフィー理論まで幅広い話題を駆け抜ける。本書で触れていない線型代数は同著者『数学と算数の遠近法』で文庫になっているし、それぞれの話題に入門書2014/06/01
kochi
19
現代数学の合言葉は「ハイホー」ならぬ「ハイリホー」。この合言葉をとなえると、超越数(円周率等)が無限にあることはわかるが、個々の数字が超越数かどうかは、個別に証明してみなければわからないのだそうだ。成果を上げながらも仕事も残る^_^、マッチポンプみたいな現代数学を比喩的に解説する本書、クリスティの名作の犯人についての重要なヒントがあったりして、油断がならないf^_^; カタストロフィーやファジィの話が出てくるのは出版年度が影響していて、懐かしい。2017/12/29