内容説明
すべてが白黒に見える全色盲に陥った画家、激しいチックを起こすトゥレット症候群の外科医、「わたしは火星の人類学者のようだ」と漏らす自閉症の動物学者…脳神経科医サックスは、患者たちが抱える脳の病を単なる障害としては見ない。それらは揺るぎないアイデンティティと類まれな創造力の源なのだ。往診=交流を通じて、不可思議な人生を歩む彼らの姿を描か出し、人間存在の可能性を謳った驚きと感動の医学エッセイ。
目次
色盲の画家
最後のヒッピー
トゥレット症候群の外科医
「見えて」いても「見えない」
夢の風景
神童たち
火星の人類学者
著者等紹介
サックス,オリヴァー[Sacks,Oliver]
1933年、ロンドン生まれ。オックスフォード大学を卒業後、渡米。脳神経科医として診療を行うかたわら、精力的に作家活動を展開し、優れた医学エッセイを数多く発表する。鋭敏な洞察と人間への深い共感に支えられた本書『火星の人類学者』は、多くの読者を魅了して全米で大ベストセラーとなった。著書には他に、同名映画の原作となった『レナードの朝』や、『サックス博士の片頭痛大全』『色のない島へ』(以上早川書房刊)『妻を帽子とまちがえた男』『手話の世界へ』などがある
吉田利子[ヨシダトシコ]
1946年生まれ。東京教育大学文学部卒、翻訳家。訳書に「失語の国のオペラ指揮者」(早川書房)「記憶を消す子供達」他多数
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- 評価
2014年5月1日〜本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
57
毎度のことながら人間の、脳のセンスオブワンダーに想いを馳せる。7人の患者がチャーミングに映るのは、サックス先生の眼差しや距離感に負うところが大きい。症例としてだけではなく、人として興味を持つからだ。多くの研究者や臨床家は多忙のせいかこれができない。2017/10/02
harass
57
医学エッセイ。障害を持つ7人と彼らからみた世界の考察。自分の目当ては表題の元自閉症の動物学者。テンプル・グランディン。彼女のことは、先日読んだ自閉症スペクトラムの本で初めて知ったが、実は自閉症のことでは有名な人で著作も多いとのこと。著者は彼女に取材して、家や職場を尋ねいろいろな話を聞く。自閉症を脱したが、知能が高いが社会性が乏しく、なんとか悪戦苦闘して社会と折り合いをつけていったのだという。この奇妙な表題は、彼女が正常な人たちと折り合いをつけるときの心地だそうだ。永遠の孤独を感じさせる…… 2016/08/11
綾
25
脳神経科医オリヴァー・サックスが様々な患者達を見つめ、脳の仕組みや病気についてその姿を浮き上がらせていく。面白かったのは、目の手術をして見えるようになったのに「見えない」話と、自閉症患者が観察を積み重ね、何とか社会的に自立して生活を送ることができている表題作。2019/12/04
Ayah Book
20
医師のオリヴァー・サックスさんが、研究の為出会った7人の障害を持つ人々。トゥレット症候群や自閉症など興味深い症例が並ぶ。あとがきにもあったが、小説風に描くことによって、それぞれの人を鮮やかに浮かび上がらせている。特に魅力的に感じたのは、トゥレット症候群の外科医ベネット博士。彼はチックの症状を見せながらも、とても明るく知的で、手術の腕は見事である。他にも脳腫瘍のために別人のようになってしまったグレッグは、いつも上機嫌だが何もかも忘れてしまう。とても胸の詰まる切ない話だが、ユーモラスでもあった。良い本です。2020/01/14
兵士O
18
僕の職場には、若い自閉症のT君という同僚がいます。彼と話す時はこの本の「神童たち」のスティーヴン少年のように、ちぐはぐな会話になります。でもサックス博士がスティーヴンに「人間性」を探そうとして、見出せなかったこと(と僕は読んで判断した)と違い、T君はギャグが分かる男だと僕は思っています。例えば、「コンプライアンス的に大変なアレな子」とか仕事中叫んでいて、僕がハモると同志を見つけたかのようにニコニコ笑います。サックス博士のように専門家としてその人を観察するというよりは、ネタが通じる友人として僕は見てますね。2021/01/17