感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
6
再読。日本演劇界に巨大な足跡を残した土方与志の妻・梅子の回想。「鬼県令」三島通庸の孫娘として生まれ、多くの貴族高官を親族に持ち、夫の与志も土方伯爵家の後継者というエスタブリッシュメント。ところが、その夫が演劇と左翼思想にはまり込んだことで、彼女も時代の激動に巻き込まれていく。やんごとなき華族の姫君の生活、黎明期の演劇を支えての奔走、官憲による弾圧と亡命同然の国外移住等々、目まぐるしいまでのジェットコースター的人生だが、それを乗り越えた著者のがむしゃらさと楽天性に敬服する。お勧めの一冊。2023/10/04