内容説明
ウィリアム・ブレイクの描く“竜”に自らを重ねて残忍な犯行に及ぶ男、“歯の妖精”―憑かれた情熱と歪んだ欲望に突き動かされ、犯人は不敵な挑戦状をFBIに叩きつける。さらにそれを秘かに操ろうとたくらむハンニバル・レクター博士。FBI捜査官たちは翻弄され、グレアムの身にも危険が迫る。悪の牙はゆっくりと肉に喰らいつき始める…サイコ・サスペンスというジャンルの狂気の殿堂に燦然と輝く、名作中の名作。
著者等紹介
ハリス,トマス[ハリス,トマス] [Harris,Thomas]
1940年テネシー州ジャクソン生まれ。ベイラー大学卒。AP通信の記者を経て、1975年『ブラックサンデー』で作家デビュー
加賀山卓朗[カガヤマタクロウ]
1962年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
319
★★★★☆ 下巻ではダラハイドが如何にして殺人鬼になっていったかが詳細に描かれる。また盲目の美女リーバの登場により、ダラハイドが少し人間性を取り戻しそうになることで、それまでのFBI対異常犯罪者という単純な構成に格段に物語に厚みが出たと思う。 後半にはレクター博士の登場シーンが殆どなくなったのは残念だが、最後まで不穏な空気感が継続していてスリリングだった。 トマス・ハリスの作品は物語が進めば進むほど、どんどん面白くなるイメージで、本作もまさにそうだった。2022/12/18
まふ
97
下巻はより凄惨な展開かと思いきやさほどのこともなく、まあまあの許容範囲であった。この類の物語で私が一番読みたくないのは主人公の家族にまで被害が及ぶ(それもじわりじわりと)パターンであるが、そこまで行かなかった。だが、最後は簡単には終わらず、ここがこの作者の腕の見せ所であったと気づく。確かにこのままなら簡単な終わり方だったなあ、と思っただろう。さらに、ハンニバル・レクターが気軽に手紙を出して来れるというのは「超厳重な刑務所体制」とは到底言えない。「続きもの」だから仕方がないのだろうか? G1000。2023/06/17
NAO
75
自分の容姿に強いコンプレックスを持っている人間が、新たな別のものに生まれ変わるための儀式として行う犯罪、そのまがまがしいまでの狂気。普通の生活を送ってはいるものの、実は、潜在的に悪に引き付けられるものを持っている犯罪捜査官のあやうさ。そして、高度な知能を有しながら人間的感情を全く持たないレクター博士の狂気と、その狂気に吸い寄せられる人々。どんなに用心していても、レクター博士なら、それでも、どんなことをしてでも相手を打ち負かす手を見つけてしまうだろうという気がするところが、なんとも怖い。2018/08/18
鱒子
74
上巻では、犯人の静かな狂気、そして主人公の賢さと弱さが魅力でした。下巻に入って犯人の姿が浮き彫りになるにつれて、作品としての魅力が猛加速!訳者あとがき、桐野夏生さんの解説も非常に興味深い。素晴らしい犯罪小説です。絶賛。2022/03/15
yucchi
39
【メディアミックス祭第五弾】下巻は犯人の不幸な生い立ちが語られる。しかしグレアムも犯人もほぼ登場しないレクター博士の手のひらの上で踊らされていただけなのかもしれない。2016/04/24