内容説明
“シブミ”とは、ありふれた外見の裏に潜む洗練、日本的精神の至高の境地をさす。少年期に日本人の岸川将軍から“シブミ”の思想を学び、青年期に大竹七段から囲碁の手ほどきを受けたニコライ・ヘルは、いまや世界屈指の暗殺者となっていた。ハンナを護る決意をしたヘルだが、“マザー・カンパニイ”はCIAや警察をも支配下に置き、包囲網をせばめてゆく…美しく華麗な自然描写と凄絶なアクションが融合した冒険巨篇。
著者等紹介
トレヴェニアン[トレヴェニアン][Trevanian]
覆面作家。1972年に冒険小説『アイガー・サンクション』を発表し、高い評価を得る。その後『夢果つる街』(1976)、本書(1979)、『バスク、真夏の死』(1983)などを発表、世界中の読者を熱狂させた。2005年12月14日に死去。本名がロドニイ・ウィリアム・ウィテカーであることがわかっている
菊池光[キクチミツ]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
164
良かった。普通なら最後の戦闘やテロリストとの戦いにページを割くべきなのだろうが。本書はその点淡白である。これは武人の精神を表わしたもの。武人かつ哲学者、武人かつ庭師である日本の侍の崇高な精神を持つ男。その生きざまであり行動哲学が主題だ。商業主義に堕した米国と対比することでそれをさらに強調した。外連味とは程遠い作風だがタイトル通り渋味がある作品となった。不可能とも思える作戦を黙したままこなす姿は圧巻だった。2021/12/28
NAO
68
アクションシーンもあまりなく、あれだけこだわった「シブミ」についてもいまいち納得いかない。日本の精神世界・独特の技量に作家が深く傾倒しているのは分かるのだが、なんだか欲求不満な読後感。2020/02/05
財布にジャック
64
上巻では囲碁が物語を構成する上でのスパイスとなっていましたが、下巻ではケイヴィングでした。ケイヴィングのシーンは特に丁寧に書かれていて、まさに手に汗握るシーンの連続でした。そして、この小説は孤高の暗殺者が主人公ですが、脇を固める登場人物達が本当に素晴らしいです。岸川将軍、大竹七段、真理子、ベナー、ハナ、モーリス、どの人も魅力的です。暗殺者なのに、こんなに愛されてヘルは幸せ者です。 2012/02/29
GaGa
50
序盤は中々話に入り込めず苦労したが、上海で若き日の主人公が出てきたところから俄然面白くなった。タイトル通り、日本人の感ずる「渋み」の哲学を知った男の美学の物語であり、また復讐劇でもある。ウィンズロウの「サトリ」も是非読んでみたい。モーリス・ド・ランドが好きなキャラクター。231Pの食事シーンはなかなかよろしい。2011/11/29
ntahima
48
ノスタルジックかつリリカルな上巻から一転、ケイビング(洞窟探検)場面での幕開け。当然これはクライマックスへ向けての伏線となっている訳だが、幾ら何でも80頁は長すぎる。全体の4分の3くらい過ぎて、やっと話が動き出すが、最強の暗殺者と言いながら、攻めは強いが守りは弱い。西洋版金田一耕助といったところか。世界を裏から牛耳る黒幕とは談合し、実行部隊に対してのみ復讐するなど、今一つ感情移入し切れなかった。但、上下巻平均すれば水準以上の出来栄えと言える。上巻が気に入ったら『夢果つる街』を是非 読んでほしい。哀感絶品。2012/04/28