内容説明
ゴーリキー公園の顔と指のない三つの死体―それは誰も触れることの許されぬソビエト社会の根深い矛盾を象徴していた。ようやくレンコは殺人犯の正体をつかむが、検事局長から捜査の終了を命じられる。彼はけっして掘り起こしてはならない過去を発見してしまったのだ。主任捜査官の地位さえも奪われたレンコは、メーデーの夜、ついに犯人と対決する。そして彼が海の彼方で見た、驚愕の真実とは?英国推理作家協会賞受賞作。
著者等紹介
スミス,マーティン・クルーズ[スミス,マーティンクルーズ][Smith,Martin Cruz]
1942年、アメリカのペンシルヴェニア州生まれ。ペンシルヴェニア大学卒。ジャーナリストを経て1970年代から小説を書き始める。1981年にレンコ主任捜査官が活躍する『ゴーリキー・パーク』を発表し、「現代ミステリの最高水準」と絶賛され、英国推理作家協会が贈るゴールド・ダガー賞を受賞した
中野圭二[ナカノケイジ]
1931年生、慶應義塾大学大学院修士課程修了、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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absinthe
166
下巻の前半は特に面白かった。ニューヨークは…謎の答え合わせに力が入りすぎてダレてしまったか。テーマがテーマだけに手放しのカタルシスとは言えないが、まぁ納得の結末。自分で選んだ道だから。それにしても全体主義国家の陰鬱さと抑圧は凄いものがある。ソ連を軽蔑し憎みながら、ロシアに愛すべきものが無かったということでもなかった。望郷の念なのか。国家的犯罪と取引。その陰で泣いた人々。ツンデレキャラなのか、上巻で悪印象のあの少佐は実は結構いい奴だった。2021/09/03
ケイ
110
正しい男は正しいことをするだけだ。それが格好いい。ロシアの刑事とアメリカの刑事、KGBとFBI。まだ冷戦時代の話。レンコ、追いかけたい。2017/07/17
扉のこちら側
71
2016年839冊め。【215-2/G1000】逮捕すべき犯人はわかっているのに手出しができない、共産圏の事情。やはり推理小説ではなく、体制下で行う犯罪捜査の困難さに立ち向かっていく主人公のハードボイルドを楽しむ作品として読んだ方がいい。彼の成し遂げたことはヒロインのために…とわかるのだが、あまりイリーナは魅力的には思えなかった。冷戦時代の雰囲気を感じ、ただただ寒い。2016/10/12
harass
67
ありきたりな警察小説であれば下巻の半分で終了するはずだががと困惑しながら読み進める。犯人はロシアと米国の国益を左右する立ち回りをこなし、絶望的な立場の主人公の心情やどうなるのか先が見えない展開と結末。個性豊かな人物造形や歴史の皮肉と組織の欺瞞など興味深く読みごたえがあった。食傷気味のジャンル小説かと期待してなかったのだがお世辞ではなく大した作品だと感心した。実におすすめ。ガーディアン紙の1000冊の一つ。納得のリスト入り作品。2017/06/07
bookkeeper
33
★★★★☆ 再読。下巻の展開が全く記憶に無くて、楽しめた。レンコとイリーナは刑事と事件の関係者として激しく言葉の応酬をするが、誰よりも互いをさらけ出して理解し合っていく。そしてKGBのプリブルーダとも尋問をする側・される側の立場を超えていつしか絆を築いていく。あぁ、こういうところが名作たる所以ね。自由を人質に取られたイリーナと、イリーナを人質に取られたレンコ。苦い結末だが甘い結末よりずっと良い。 「立ち上がるひまもなく死んでいた。でも先生は外に出たのよ。それが大事なことだわ。死ぬのをただ待っていなかった」2020/09/11
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- ほつれとむすぼれ 角川文庫