内容説明
満月の夜に連続して起きた一家惨殺事件は全米を震撼させた。次の満月までに犯人を逮捕すべく、元FBIアカデミー教官のグレアムは捜査を開始する。彼は犯人像の手がかりを得ようと、以前連続殺人事件で逮捕した精神科医のレクター博士を、収容先の異常犯罪者専用の医療施設に訪ねた。犯人は次の殺害計画を練る一方でこうした動きを新聞で知り、グレアムをつけ狙い始める―究極の悪ハンニバル・レクター衝撃の初登場作。
著者等紹介
ハリス,トマス[ハリス,トマス][Harris,Thomas]
1940年テネシー州ジャクソンに生まれ、少年時代をミシシッピ州リッチですごす。テキサス州ウェイコーのベイラー大学を卒業後、AP通信の記者を経て、1975年に処女長篇『ブラックサンデー』を発表。1981年に発表した『レッド・ドラゴン』では、恐るべき連続殺人犯でありながら天才的な頭脳を持つハンニバル・レクター博士を登場させ、世界に衝撃を与えた。その成功を受けて『羊たちの沈黙』(1988)、『ハンニバル』(1999)を発表、ベストセラー作家として確固たる地位を築いた
小倉多加志[オグラタカシ]
1934年京都大学英文科卒、1991年没、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
391
「ハンニバル・レクター博士、衝撃のデビュー作」とのキャッチコピーだが、上巻ではレクターは登場はするものの、まだ不気味な影といったところ。犯人は登場してきた途端に明らかだし、2つの事件の共通点も簡単にわかってしまう。つまり、そこに作品の妙味が求められるのではないということだ。本編は、これ以降の『ハンニバル』、『羊たちの沈黙』へと続くサイコ・サスペンスの領域を切り開いた傑作との評判が高いようだ。確かに、全編にわたって血生臭さが漂い、心的な恐怖が揺曳し続けるといった、新しいタイプの作品であることは間違いない。2016/03/06
のっち♬
145
異常犯罪捜査の専門家がFBIに協力する形で連続一家殺人鬼を追う。後年に看板キャラクターとなるレクター博士が初登場。近づけばただでは済まない高度な知性と残忍性は、脇役ながら全編に絶対的な影響を落とす。人格に不気味な整合感のある彼はサイコパスの典型たる犯人やモラルを持つグレアムと対比させることで強烈なカリスマ性を持たせている。ただでさえ一癖も二癖もあるサイコスリラーの対立構造に何でも見通す存在が絡む面白さに加え、捜査面や心理面のディディールも充実しており緊張感が維持される。魔でも妖精でもどこかしっくり来ない。2023/06/21
セウテス
75
「羊たちの沈黙」以前のストーリー。ハンニバル・レクター博士の初登場作品ですが、今回はまだ不気味な存在程度の出演。満月の夜に、連続して一家惨殺事件が起こる。異常犯罪捜査の専門家グレアムは、次の満月迄に犯人を捕まえようとレクター博士に会う。幾つかの犯行の異常性から、その類似点を明らかにして犯人にたどり着こうとする、捜査や考え方などに特徴がある。今までの、サイコ・サスペンスといえば、サスペリアやシャイニング、サイコの様に恐怖を前面に推していた。論理的に犯人を特定、犯人自身を描写しようとした初期の作品だと思う。2016/07/01
藤月はな(灯れ松明の火)
51
物語が始まる前のウィリアム・ブレイクの無垢の詩』と『経験の詩』の挿入されている。この物語では『経験の詩』が核を為す。背中に「大いなる赤き竜」を背負い、幸福な家族を目の前で殺害する犯罪者の心理に肉薄することで捜査するグレアム。一方、レクター博士も犯人の心理に肉薄していた。短い出演ながらもレクター博士の存在感が濃すぎてグレアムがかすむという不思議。個人的に印象的だったのは、ダラハイドが生まれ育った祖母の家の寒々しさの描写でした。あの冷笑的で爪先から凍っていくようなよそよそしい部屋の様子は怖い・・・・。2014/12/15
おか
45
サイコサスペンスの「ハンニバル」への第一章とも言える作品。ケーブルTVで「クリミナルマインド」をよく観るので サイコパスには 慣れ親しんでいる(笑)まだサイコパスの神の様な存在 レクター博士は州立ボルティモア病院に収容されている。犯罪現場は凄惨なのだが 活字で読む為に サラッと受け流せば 全く問題ないグロさである。上巻では レクターを逮捕して 今は普通の人となった元捜査官のウィル・グレアム(異常犯罪捜査の専門家)が呼び戻され 捜査に当たる事となる。色々 伏線は有るが まあ静かな出だしだ^_^さあ下巻へ!2017/04/23
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