内容説明
キム・フィルビーを徴募したソ連の大物スパイ、オルロフがその正体を世界に明らかにしたのは、米国に亡命後17年目のことだった。CIAが彼を英国のテレビ番組に出演させ、ソ連に打撃を与えることを目論んだのだ。最初しぶっていたオルロフは、昔別れた妻の娘リンが司会者としてこの企画に参加していることを知り出演を承諾した。だが、懐かしいかつての活躍の地に上陸した彼を待ちうけていたのは、テレビで対面するはずの元外交官の暗殺だった。事件の背後に蠢く陰謀に、老スパイの意地をかけて孤独な追跡が始まった。人気作家久々の力作巨篇!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
38
2014年の今なお小説の題材として語られるキム・フィルビー事件。本書はこの稀代のスパイを育て上げた伝説のKGB部員オルロフが自身を暗殺しようとする謎の人物を追って国を跨って捜査をする物語。スパイ活動に時効はない。バー=ゾウハーは現時点での最新作でも歴史の惨たらしい暗部に携わった人々の罪が決して時間によって浄化されることはないと痛烈に謳っている。しかしなんという深みだろう。最後はオルロフが述懐する、この物語の本質を実に的確に云い表した言葉を添えてこの感想を終えよう。“諜報活動のからくりは、じつに複雑怪奇だ”2014/05/13