感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉倉槇一
1
モラヴィアの代表作として『無関心な人々』の評価は揺るぎないが、次点には『軽蔑』を挙げる人が多いようだ。しかし筆者は本作を採りたい。『軽蔑』は完璧な作品とはいえ、カフカを読むような息苦しさがある。一方『孤独な青年』は、幼少時の恥辱を雪ぐためにファシズムの毒に自ら冒された青年の破滅を輝かしい文体でロマンティックに、しかも冷然と謳い上げている。モラヴィアの抽象的な心理主義は今日受け容れられるか疑問だが、作家の華麗なレトリックはその重さを補って余りある。ベルトリッチの傑作『暗殺の森』の原作でもある。1951年刊。2013/01/09
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