ハヤカワ文庫<br> キャッチ=22 〈下〉

ハヤカワ文庫
キャッチ=22 〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 373p
  • 商品コード 9784150401344
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

276
ここで終わりなのか、というのが最初の印象。それでいいのかも知れないと思い直す。終始、無茶苦茶と言ってもいいくらいの展開であったが、後半からは徐々に、そして終盤では一気にシリアスさを増す。実体のない「キャッチ=22」だが、むしろその実態のなさにこそ本質があるのだろう。戦線そのものも実態があるのかないのかわからない。その最たるものがMアンドM企業だろう。キャスカートやコーンもまたそうだ。自己の誠実さは、大義を見失った戦線の中では不毛だ。そもそも、人生そのものも不毛であるのかも知れない。アメリカの苦悩は深い。2016/12/23

ケイ

98
迷作?名作だろう。下巻では、上巻でのバラバラの時系列のためにほったらかしだったぶつ切りの出来事の続きが、これまらバラバラに語られるが、だんだんと繋がっていく。ユーモアともとれる狂気のオブラートで包まれてはいても、描かれているのはまさしくいつ終わるともしれない戦闘に向かわさせる兵士たちのおかれる悲惨な状況。特にスノーデンの話の描き方に、作者の天才ぶりを見る。めちゃくちゃな配列ながら、実は全体としてよく考えられており、また一つ一つのエピソードがひきこまれるほど面白い書き方にピンチョンをおもう。2015/11/08

Koichiro Minematsu

47
戦争はあらゆる犠牲者が犯罪者であり、あらゆる犯罪者が犠牲者である。 存在しないキャッチ=22が隊員に有無を言わさず戦地へ赴かせる。 ヨッサリアンは逃亡する責任を自らに課した。2025/05/31

おおた

16
悲コントは続く。なんとかして軍を抜けて帰国したいヨッサリアンと、出撃回数を増やして功績を上げたい上官たちの対立は激しくなり、壊れた人工知能に説教しているような気分にさせられる。ぽつりぽつりと仲間が死ぬと、こちらまで相部屋の仲間が死んだような悲しみに陥るのは、笑いとの大きな差異が突然できるからだ。ヨッサリアンは更に卑劣で惨めな地獄を見るが、ただひとつの希望を見出して再び空を飛ぶ。本当に微かな希望で愚かしさすら漂うのに、しがみつかなければならない人生。誰がヨッサリアンを笑えるか。笑え、そして泣け。2014/11/30

allite510@Lamb & Wool

12
普段忘れがちだけど、生きていくのは恐ろしいことなのだ。それを忘れてしまったり、眼を伏せたりすることで、ちょっとずつ人は狂っていくのかもしれない。この物語は、しばらくの間、世の中が狂っていることを忘れないための昏い絶望と、それを直視しても狂わないための少しのエネルギーをくれるだろう。下巻後半を読みながら、V.E.フランクルの言う「自由」と、もののけ姫の「曇りなき眼で見て、決める」という台詞が頭の中で反響し続けていた。ヨッサリアンと、オアと、従軍牧師のことはきっと、忘れられないだろうなあ。2017/09/29

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