感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
115
舞台はシカゴ。しかし、いわゆるギャングは出てこず、主人公のフランキー・マシーンをはじめ登場人物達は、都会の片隅で賭博場に入り浸り、小さな犯罪で警察につかまることを繰り返す。女たちはいつも男に手をかけてもらいたがるか、もしくはひたすら尽くす。どちらも男をダメにする。這い上がろうともしない人々。フランキーのように再起しようとしても、泥の中にどっぷりとつかった足を引き出すことはなかなかできないようだ。そういう都会の底辺の暮らしが描かれる。2016/05/31
NAO
58
自分の思うようにトランプのカードを操ることができる黄金の腕を持つフランクは、麻薬で破滅していく自分を「猿の手がずしりと背中にのしかかる」と表現しているが、それは戦時中のシカゴの暗さそのものだ。麻薬という「猿の手」と、世界を変えてしまった「日本に落とされたすごい爆弾」はフランクを徹底的に押し潰してしまったが、大きく変化する時代にとりのこされた最下層の人間は、自ら破滅していくしかなかったのだろうか。2017/04/05
秋良
12
【G1000】訳は古く、フォントも小さくとにかく読みづらい。内容も戦後シカゴの最下層の人々の暮らしがメインで、気の滅入るような貧困の描写が長々と続く。ヤクに手を出したディーラーは、一件の殺人を犯してからどんどん深みにはまってゆく。自己破壊を繰り返す彼の姿にはある種の諦念が漂っている。彼に依存し、得られなかった愛のかわりに彼を惨めな境遇へ引きずり込もうとし、最後には狂気の世界へ逃げたソフィには嫌悪感しか覚えなかった。陰鬱な夫婦と対照的に、下町のドタバタはコメディちっくで笑える。2020/09/20