出版社内容情報
無人探査機が到達したドルドラ星系で発見された恒星間宇宙船。なぜか遭難から数千年が経過したらしき船の畏怖すべきドラマとは?
内容説明
150年前に植民されたドルドラ星系の惑星シドンには、人間のような知的生命ビチマが存在した。入植者から家畜同然の扱いを受けたビチマの正体が、実は3000年前にワープ事故により遭難した恒星間宇宙船コスタ・コンコルディアの乗員の末裔と判明する。彼らの人権回復が図られる中、ある遺跡でビチマの惨殺死体が発見される。緊迫するシドン社会に対し、地球圏統合弁務官事務所より調停官のテクン・ウマンが派遣される―。
著者等紹介
林譲治[ハヤシジョウジ]
1962年北海道生まれ。臨床検査技師を経て、1995年『大日本帝国欧州電撃作戦』(共著)で作家デビュー。確かな歴史観に裏打ちされた架空戦記小説で人気を集める。ミリタリーSFシリーズ“星系出雲の兵站”で、第41回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
107
『工作艦明石の孤独』がグダグダな結末(私観)に終わったので、その外伝として読むよりホーガンの『星を継ぐもの』と眉村卓の司政官シリーズを組み合わせた設定のドラマを純粋に楽しむべきか。奴隷制度が経済発展を支えてきた植民星で、その前提を覆す可能性のある死体発見により政治的緊張が高まっていく描写がうまい。法的には差別が廃されても人の心に根強く残る欧米の現状を思わせ、死体の謎を解明しつつ暴力に訴えさせず軟着陸を図る調停官の苦心は政治小説としても読ませる。長い連作よりも、すっきり刈り込んだ締まった小説の方が上出来だ。2023/09/23
fukumasagami
22
宇宙船のワープ航法でのタイプスリップにより過酷な異星環境に3000年の時差を以て住み着いた人類間の差別を社会的に矯正できるか?調停官の活躍。2024/02/01
tom
21
工作艦明石のスピンオフ。場所は荒れ果てた惑星。上空には、かつて捨てられた宇宙船が漂っていた(この部分だけが工作艦の物語の中で触れられている)。それでも、人間たちは植民し、先住民を使役して、どうにか生き延びている。そして、先住民の死体が発見された。この問題を解決するために派遣されたのが「調停官」ウマン。解き明かされた事実と展開は、なかなか面白い。さらには・・・まで。政治の理念と実現のための統治のあり方、生態学と歴史などなど、話題は多々。たぶん「明石」よりもくっきりした物語の展開。楽しんで読む。2023/11/22
アオイ模型店
3
「人類が植民惑星で遭遇した知的種族、彼らの正体は、遥か昔にたどり着いた地球人の末裔だった」 この設定、同じ作者の「侵略者の平和」でも使われてますが、作者のお気に入りなのかな? 本編ではセラエノの人たちはシドンに関するデータを持っていなかったようだけど、さすがに名前くらいはデータがありそうな気がするのだが、この辺もアレの影響なのだろうか?2023/09/21
(ま)
2
作品世界だけが一緒の外伝 ワープ遭難で時間を遡り退化した人類と新たに入植した人類の悲惨な遭遇と錯綜する社会の思惑を発掘で調停して2023/08/20