出版社内容情報
全てが内部で自己完結するコロニー、バイオスフィア3。そのクレーム対応を描く連作。電撃小説大賞金賞作家による未来の住宅SF
内容説明
バイオスフィア3型建築、それは内部で資源とエネルギーの全てが完結した、住民に恒久的な生活と幸福を約束する、新時代の住居。その浸透によって人類の在り方が大きく様変わりした未来、バイオスフィアを管理する後香不動産の社員として働くアレイとユキオは住民からのクレーム対応により、独自に奇妙な発達を遂げた家々の問題に向き合っていくことになる―ポスト・ステイホームの極北を描いた新時代のエンタメSF。
著者等紹介
周藤蓮[スドウレン]
作家。2016年、『賭博師は祈らない』が第23回電撃小説大賞“金賞”を受賞。2017年に同作で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
43
住民に恒久的な生活と幸福を約束するバイオスフィアⅢ型建築。後香不動産の社員として働くアレイとユキオは独自に奇妙な発達を遂げた家々の問題に向き合ってゆく近未来小説。新時代住居の浸透により類の在り方が大きく様変わりした未来。引きこもる個々の住居からのクレームで直面する、査問神殿で見つかった鎮痛剤、自給自足を標榜するコロニー、大人になれない大人たち、左右対称の隣人トラブル。当事者たちの異常性に感じる進化の歪みも、一方で納得してしまう部分もあって、それに向き合い解決してゆくコンビの距離感がなかなか良かったですね。2022/12/17
うまる
33
素晴らしいセンス!未来の住居のクレーム対応から、その世界の歪みが見えてくるのが巧いです。大抵の事が叶うなら、幸せに暮らす人ばかりじゃないのかと思ったので、1話目の住居からガツンとやられました。たしかに、悠々自適に暮らす事を怠惰と考えて、自分を律したいという思考の人は生まれそうだなぁと凄く納得。一番好きなのは、社会がなくなった事が原因の第三話。もはや国はないのに、廃止も改定もないまま形骸化した法律との兼ね合いや、新時代のシステムから取り残された2人の話もとても良くできてます。終末旅行のような雰囲気も◎2022/12/12
宇宙猫
20
★★★★ ほとんどの人が閉鎖系の家バイオスフィアに住み外に出ない世界で、サービスコーディネーターのアレイとデバイスアンドロイドのユキオがクレーム対応に行く。社会の在り方などの重めの問題はサラッと流し、主人公達の過去などはハートフルにまとめていて楽しく読めた。2023/07/02
のれん
20
人類存続とか仕事とか気になる世界観は「〇〇が自己実現になる人は一定数います」で済ませるのは、すこしふしぎなSF極まってるw もしたった一人で住む家の中で世界が完結したなら。思考が止まると知らないままシステムの中で介護される。痴呆の動物介護ってこんなんかもしれない。 全てのシステムが完璧で停滞した世界。そこで知識をつけ、自分の直観で感じた不快感を言葉にしようとする少年。 もう全てが代替できたとしても、親と飲む酒の味だけは何物にも代えられぬ味があるものだ。 良き子育てSFだった。2022/11/20
塩崎ツトム
18
万人の理想的な内環境を提供できる「バイオスフィアⅢ」によって全人類がヒキコモリになった未来。ここからだとウエルベック小説みたいである。人間という核を持って半永久的に稼働する住宅とは一種の拡張された細胞ではないか? 延長された表現型。新たなガイア理論の時代?2024/01/04