出版社内容情報
二人以上殺した者は文字どおり地獄に堕とされる世界。探偵の青島を常世島で待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった
内容説明
2人以上殺した者は“天使”によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。過去の悲惨な出来事により失意に沈む探偵の青岸焦は、「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱に誘われ、天使が集まる常世島を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。犯人はなぜ、どのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。最注目の作家による孤島×館の本格ミステリ長篇。
著者等紹介
斜線堂有紀[シャセンドウユウキ]
上智大学卒。2016年、『キネマ探偵カレイドミステリー』で第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞してデビュー。2020年発表の本書『楽園とは探偵の不在なり』で、『ミステリが読みたい!2021年版』国内篇第2位など各ミステリランキングに続々ランクイン。現在最も注目される作家となっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
317
ミステリ+ディストピアな特殊設定物。北山猛邦『クロック城殺人事件』のような、世界観とミステリ面が解離したものにはなっておらず、いちおう天使の存在が事件にも活かされて成立している。ただ、真相に驚きがなく、二人以上殺せない世界での連続殺人という、魅力的な謎に対する解としてはどうしても弱い。犯人暴露シーンのタメが薄く、なんかあっさりしていたのも気になった。一番いらなかったのが、無理矢理に探偵の存在意義がなくなったことにして主人公を苦悩させる自家発電設定。一人しか殺さない知能犯はいくらでも出てくるだろと思う。2023/02/06
ナルピーチ
148
異形な姿をした天使が世に蔓延る世界で、天使の裁きによって二人以上殺してしまうと地獄行きというとんでもない設定の中で起きた連続殺人事件。限定された設定を欺きどんな手段で犯行を重ねていくのか…。孤島・館・特殊設定と三拍子揃った本格ミステリーは、謎の生物“天使”の存在を如何に活用するのかをポイントに、ロジカル満載のトリックを存分に楽しむ事ができた。更には仲間を失い、失意のどん底で藻掻く探偵・青岸の辛い過去を交えた“”探偵の業”の部分を描いたストーリー展開に、世の無慈悲さを感じずにはいられなかった。2023/04/03
りゅう☆
86
2人殺すと天使に地獄へ落とされる。だったら1人なら殺しても大丈夫。自分が死ぬなら道連れに大量殺人してもいいんじゃね?なんて考えが普遍する世界。天使がいる常世島に招待された探偵青岸は、巻き添えを食らった仲間を失ってから正義を追い求めることもなく…。だが島の主人が殺された。そして第二の殺人。行方不明の人物は地獄に落ちたのか?まだ終わらない殺人。次々とクローズドサークル内で起こる事件に青岸は探偵の感覚を研ぎ澄ます。見事に解決一件落着…など単純な気持ちになれない。だって天使のいる世界であることには変わりないから。2023/02/02
sin
70
昔から探偵小説は苦手だ。何となれば事件に探偵の必然性を感じないからだが…物語では天使降臨の後の探偵の必要性を苦悶する探偵が登場し「…事件に巻き込まれた人を幸せにするのが役目…」などと穿ったような解釈に辿り着く場面もみられる。キャンベルの時代にはSFとミステリーの両立は不可能とされ、その後クレメントの『二十億の針』に始まりベスターやアシモフに依ってSF探偵小説の歴史が築かれてきたが、この作品は謎解きの為に天使と云う舞台装置を前提とした処が変わっている。そして最後まで死の不条理を訴えかけているように感じた。2023/05/20
オセロ
61
斜線堂先生2冊目。 2人以上人を殺したら天使によって地獄に落とされる世界で、離れ小島にある常世館に招待された人々が次々と殺されていく事件にかつて名探偵と呼ばれた青岸が挑むミステリー。 クローズドサークルという環境に加えて同一人物は2人殺すことは出来ないという特殊な設定の中で起こる連続殺人は謎が謎を呼ぶ展開で、事件の真相と犯人の巧妙なトリックには驚かされましたが、それ以上に動機は切ないものでしたね。2023/04/11