出版社内容情報
150万市民が孤立するセラエノ星系。そこから唯一ワープ可能だったアイレム星系で、工作艦明石が遭遇した文明の意外な正体とは?
内容説明
地球圏とのワープが不能となった辺境のセラエノ星系。150万市民の文明を維持するため、アーシマ・ジャライ首相は大胆な政策を断行する。そんなセラエノにとって、高度な情報と巨大な軍事力をもつ地球宇宙軍の偵察戦艦青鳳と輸送艦津軽の動向は無視できないものであった。一方、唯一ワープ可能な隣接星系アイレムで遭難した工作艦明石の椎名ラパーナは、知性体イビスと愚直なまでのファーストコンタクトを展開するが。
著者等紹介
林譲治[ハヤシジョウジ]
1962年北海道生まれ。臨床検査技師を経て、1995年『大日本帝国欧州電撃作戦』(共著)で作家デビュー。確かな歴史観に裏打ちされた架空戦記小説で人気を集める。ミリタリーSFシリーズ“星系出雲の兵站”で、第41回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
116
一貫してファーストコンタクトに対応する政治や軍など組織を描き続けてきた著者が、初めて何の助けもなく未知の生命体と接触する個人を取り上げた。少しずつ言葉を学び、相手の生態系を推測し心を通わせようとする姿は、ロビンソンとフライデーの出会いを思わせる。現代人なら発狂しかねない状況だが、生き残る訓練を受けてきた軍人だからこそ闘えるのか。孤立無援に陥ったのはセラエノ星系も同じで、150万人だけで文明を維持するため指導者は決断を迫られる。戦闘場面はないが、宇宙の孤独に人は耐えられるのかを追求するシリアスな展開が続く。2022/11/30
fukumasagami
32
「150万人で、ひとつの星系文明は維持できるのか?」+「たった1人で、異種知性体とのコンタクトは可能か?」原理のわからないワープ航法で複数の星系に進出し、科学技術停滞期を迎えた人類が遭遇した政経国家の孤立と異星文明とのファーストコンタクト。2022/11/13
tom
24
この巻でファーストコンタクトが開始。宇宙には生命の芽が散らばってるらしいし、同じ芽から生命が現れるのなら、大きな違いはあるにしても、根っこのところで共通の形態がある。そして、知性が現れるのなら、相互理解はあるだろうということが前提。この本でのコンタクトの進め方が面白くて一気読み。もう一つは政治体制の在り方。住人がすべて参加し、小さいパーツに分かれてやり取りし、積み上げて結論を見出す。みんなが参加するから納得度が高いという図式。著者の持つ理念をSF仕立てで書いている。面白いなと思う。2023/10/15
ぽんすけ
14
未知の生命体とのファーストコンタクトって難しいんだな、としみじみ感じた一冊。何もかも違う存在だけど、唯一同じ知的生命体であるということから、意思疎通は必ずできると両者間で知識のすり合わせが行われていくんだが、これが途方もなく果てしない作業。椎名とイビスは本当にいい仕事しました。セラエノに戻ると発足したばかりのマネジメント・コンビナートというシステムがすごく未来的であると同時に、新しい政治の形態という感じがして興味をくずぐる。セラエノは確かに無限の宇宙で孤立状態に陥っているけど、言い換えればビッグチャンスだ2024/01/05
すいそ・はいどろ
8
エイリアンとのファーストコンタクトが個人で孤立した形で行われたとして、しかも互いに優れて探求的な種同士という設定ならば、争いも誤解も無駄も発生しない、こんなにストレスフリーなケースが想定できることに少し驚く。なんて理知的なファーストコンタクト。一方で文明と物量から切り離された星系に閉じ込められた人類の、リソースの超効率的運用のもとでかんがえられたマネジメント・コンビナートという発想はとても面白い。面白いけど、これはSFを読む面白さなのか?林壌治恐るべし。2023/05/30