出版社内容情報
映画化作品『恋する寄生虫』
著者の最新作、待望の文庫化
架空の青春の記憶を植えつけられた青年は、その夏、実在しないはずの幼馴染と出会う。これは、始まる前に終わっていた恋の物語。
内容説明
二十歳の夏、僕は一度も出会ったことのない女の子と再会した。架空の青春時代、架空の夏、架空の幼馴染。夏凪灯花は記憶改変技術によって僕の脳に植えつけられた“義憶”の中だけの存在であり、実在しない人物のはずだった。「君は、色んなことを忘れてるんだよ」、「でもね、それは多分、忘れる必要があったからなの」。これは恋の話だ。その恋は、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた。
著者等紹介
三秋縋[ミアキスガル]
1990年生まれ、岩手県出身。2013年『スターティング・オーヴァー』でデビュー。2019年、『君の話』が第40回吉川英治文学新人賞候補に選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いこ
103
読書中ずっと美しい夢の中にいるようだった。話は多分ちょっと未来。嫌な記憶を薬で消せる時代。楽しい記憶を薬でつくれる時代。主人公の千尋は、子供時代の孤独な記憶を消すため、記憶消去薬をのむ。ところが、薬が取り違えられ、千尋の胸には新しい記憶が宿ってしまう。その記憶の中では、千尋の側にはいつも、仲のよい幼馴染の灯花がいた。ある日、現実世界に灯花が現れて…。記憶の中にしかいないはずの、この灯花は誰なのか?千尋には、忘れている記憶があるのだろうか?切なく優しい嘘によって紡がれていく、いとおしすぎるラブストーリー。2022/04/23
『よ♪』
58
世界で一番優しい嘘をつく仕事──舞台は少しだけ未来…か。心のセラピーのための薬"ナノマシン"は記憶を修正する医療。過去の記憶を捨て去ろうと<消す薬>を飲んだ青年"千尋"。彼のもとには手違いで<良き思い出>を上書きする薬が届き、それを飲んでしまう。夢や記憶に現れる架空の幼馴染"灯花"。偽の記憶に翻弄される自分に嫌気がさし、酔いつぶれて迷い込んだ神社ですれ違った彼女。花火柄の紺色の浴衣。実在するはずのない彼女は──。と、わくわくする始まり。そして深く切なく収束する終わり。世界で一番優しい嘘。温かく、悲しい嘘。2022/03/31
よっち
39
記憶改変技術「義憶」が普及した世界。二十歳の夏、天谷千尋が一度も出会ったことのない、存在しないはずの幼馴染・夏凪灯火と再会したことで動き出す物語。何もない過去を消したかったはずが、植え付けられるたった一人の幼馴染の鮮明な記憶。あまりにも運命的な再会から突如目の前に現れた灯花の存在を疑って、どうしようもなく惹かれてゆく千尋。そこにはもうひとつの物語があって、不器用でお互い遠回りせざるをえなかった二人がきちんと向き合って、儚く切ないけれど優しさが感じられる物語の結末に著者さんらしさがよく出ていると思いました。2021/11/03
ピロ麻呂
32
めっちゃよかった✨結末が気になり一気読み😊過去の思い出を変える「義憶」の設定や二人それぞれの視点で二部のストーリー展開…凄く練り込まれている。三秋作品はほとんど読んでるけど、一番好きかも。素晴らしいSF恋愛小説でした❇️2021/11/20
Junichi Yamaguchi
26
『夏の魔法』… 繊細で壊れやすく感じる文章。久々に手に取る三秋作品に震える。 嘘が好きなヒロインと嘘が嫌いな主人公… 美しい物語の中で描かれる「運命」は脆く儚い。 桜のようなものか。。2021/12/20