内容説明
日本のどこかでロシアン・マフィアによる武器密売市場が開かれようとしている。大物マフィアのゾロトフと組んだユーリは、バイヤーとして参加を許された。その背後で展開する日本警察と密売業者との熾烈な攻防。渦中のユーリは自分とゾロトフとの因縁の裏に、ロシアの負う底知れぬ罪業が隠されていたことを知る。時を超えて甦るモスクワ民警刑事の誇り―至高の大河警察小説、運命の影と灯火の第3弾。
著者等紹介
月村了衛[ツキムラリョウエ]
1963年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年に『機龍警察』で小説家デビュー。2012年に本作『機龍警察 自爆条項』(以上ハヤカワ文庫JA)で第33回日本SF大賞、2013年に『機龍警察 暗黒市場』(本書)で第34回吉川英治文学新人賞、2015年に『コルトM1851残月』(文春文庫)で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』(幻冬舎文庫)で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『欺す衆生』(新潮社)で第10回山田風太郎賞を受賞。2017年に上梓したシリーズ長篇第5作『機龍警察 狼眼殺手』(ハヤカワ・ミステリワールド)は、『ミステリが読みたい! 2018年版』国内篇の1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶち
86
読み始めからずっと興奮状態。読み終ったときには、しばらくの間は何も考えららず、何も手がつかず、頭が痺れていました。ユーリが壮絶な闘いの末に自ら見つけ出した“痩せ犬の七ヶ条"の最後の一ヶ条。それは、父がユーリに言った「まっすぐに生きろ」。まさにそれは、ユーリが警察官として"まっすぐに"生き、闘い抜いた生き様そのものでもあります。機龍警察 3作目の『暗黒市場』は、警察官たちの誇りに満ちた超絶的な傑作だと思いました。それとは対照的な"敵"との戦いが次作以降で本格化していくのだろうと、勝手にワクワクしています。2023/11/11
sin
78
まるでマトリョーシカのように入れ替わる権力構造を持つロシアのパワーバランスに翻弄され、堕ちたユーリがたどり着いた日本の警察組織で加わった潜入捜査は奇しくも彼を貶めた人物との再開へと導く…それは彼に過去の出来事を振り返る機会を与え隠された真相に思いを至らす。応援を切望する彼は日本の生温い利権喰いによる妨害に阻まれまたも裏切りを予感する。雪原の地で出会った嘗ての上役は彼を真実に導き、やがて彼の軛が解き放たれる。出来過ぎな運びであるという感じは否めないが読ませる物語だ。2020/12/17
k5
70
前作の『自爆条項』が、トラディショナルな冒険小説としての完成度が高すぎたため、上巻の感想でフラグが多すぎるとか書いたのですが、感想としてマト外れだったかもな、と思っています。『自爆条項』はメインテーマのライザに、サブとして緑の物語が絡み、ドラマとしてレベル高かったのに対し、こちらはバトルシーンをはじめとしたビジュアルで魅せる作品。ひとことでいうと全体的にアニメっぽい。子供の頃見てたアニメ映画こういう作りだったかも。でもフラグは徹頭徹尾フラグだったので、ドラマ派としては物足りないところはあります。2021/02/12
おかむー
68
上巻でのユーリの境遇に関する伏線が見事に回収される下巻。密売組織への突入に“あの人物”が協力する流れが胸アツ極まりない。『たいへんよくできました』。特捜部・沖津へのスカウトをうけて過去編は終了し、武器密売組織・ルイナクへの潜入でギリギリの綱渡りを強いられるユーリ。ある意味この事件のすべてがユーリの過去回収のためにしつらえたような展開ではあるが、それが引っかかりにならないぐらいにには引き込まれるリーダビリティーが見事。いつかユーリがロシアに堂々と戻れる日を願わずにはいられない。2021/01/10
森オサム
61
下巻読了。はい、最高。傑作頂きました!。上巻を読んで、ハードでウエットと書きましたが、ハードでウエット、そしてとってもスイートでしたね。いやー、甘いわ、めちゃくちゃ甘い。ユーリにとって、肉体的には瀕死の状況に追い込まれるが、魂は救われる物語。過去を清算し青年から大人の男になる王道な展開ですが、一つ一つ伏線が回収される様は非常に気持ち良かった。ベタ最高、出来過ぎ最高、お涙頂戴もっと頂戴、と言う訳で、まさかのあの人物が助けに来た所で泣けない人とは仲良くなれ無い(笑)。冒険小説かくあるべし、面白かったです。2024/12/28