出版社内容情報
SFマガジンに掲載された「宇宙ラーメン重油味」「たのしい超監視社会」をはじめとした、SF界若手最注目の奇才による六篇収録。
内容説明
どんな時代でも、惑星でも、世界線でも、最もSF的な動物は人間であるのかもしれない…。火星の新生命を調査する人間の科学者が出会った、もうひとつの新しい命との交流を描く表題作。太陽系外縁部で人間の店主が営業する“消化管があるやつは全員客”の繁盛記「宇宙ラーメン重油味」。人間が人間をハッピーに管理する進化型ディストピアの悲喜劇「たのしい超監視社会」、ほか全6篇収録。稀才・柞刈湯葉の初SF短篇集。
著者等紹介
柞刈湯葉[イスカリユバ]
2016年に小説投稿サイト「カクヨム」に投稿した『横浜駅SF』が、第1回カクヨムWeb小説コンテストSF部門“大賞”を受賞し、デビュー。同作は第38回日本SF大賞の最終候補作ともなっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
284
表題作を含む6話短篇の当然SF作品集。それぞれ味付けが違っているのです。「それはそうよ」と言う事かも知れませんが、『あとがき』迄ねSFチックを保っているのは流石ですね( ¨̮ )。SF作品であると言う事以外には、共通するテーマは無い様に思えるのですが、どうも死生観の様な物を背後に感じる物が多い様に思われる様な、そうでも無い様な。『宇宙ラーメン重油味』は“醤油”ってなんで“油”って字を使うんすかねーって着想したのかな。儂もそう思っている。宇宙人の生体の特徴も様々で楽しかったな( ¨̮ )。2024/04/14
そる
237
SF短編集。この作者さん博識でめっちゃ化学だし各話の主人公オタク的思考笑。でも人間的な感情もちゃんと見える。宇宙ラーメンなんて出来上がったラーメンおよそ食い物っぽくないのにうまそうだし店主キタカタの姿勢と助手ロボットマルチャンの物言いがいい!表題作もじんわりあたたかい話。長編も読む!「「ねえ、叔父さん。ぼくも、兄弟がいれば良かったのにって、思うんです」(略)「ひとりだと、なにかの間違いかもしれないじゃないですか。ふたりいれば、自分が生まれてきてよかったんだと思えます。ここにいていいんだって、思えます」」2023/07/27
tonnura007
154
生命体監視社会も進化するととても楽しいディストピア?「消化管のあるやつは全員客!」という太陽系外縁部のラーメン屋。ある日突然家に現れた岩は家族なのか。 SF短編集。どの話もピリッとアクセントが効いていて読み応えがある。どの話も面白いのだが、個人的には「人間たちの話」と「記念日」がお気に入り。「人間たちの話」では、生物とは何かを討論する人間たちを俯瞰的に見られている様が非常にシニカル。著者の意図はわからないが「記念日」は、カフカの「変身」のテイストを感じた。岩に対する心情変化の描写が良かった。2024/10/12
おかむー
98
なるほど名前は聞いていた『横浜駅SF』の著者さんか、今回初読み。『よくできました』。デビュー前の作品から雑誌掲載作、書き下ろし作品まで織り交ぜての6篇からなるSF短編集。設定やギミックはちゃんとしたSFながら、登場人物に共通の飄々とした人物像に表紙のあらゐけいいちイラストも相まって肩に力が入らないユルめの作風。それぞれの物語も衝撃の展開や劇的な結末ではなく、どちらかといえば「この前にも話があり、この後も物語は続く」といった長い物語のなかの1章を切り取った印象。2020/04/11
藤月はな(灯れ松明の火)
95
『ガイコツ書店員 本田さん』で著名だけ、知っていた作家の作品、お初。「楽しい超監視社会」はディストピアものとして固定化されたイメージを剥ぎ取る事で逆に社会がこの作品のようになりつつある事を示唆した。「消化器官があるならば、どんな拉麺でも食わせるッ!」な「宇宙ラーメン重油味」も「化学調味料ゴーレム」並の題名のインパクトとキャラのコミカルさに笑みが止まりません。拉麺に関しては頑固一徹な元・恐怖の殺戮マシンのジローさん登場はインパクトが大きい。同時に社会変化に翻弄される飲食業の悲哀とガッツを描く、賛歌とも言える2020/04/05