内容説明
ハヤカワSFコンテストと創元SF短編賞という2つの新人賞が創設された2010年代。ジャンル外の文学賞でも評価される宮内悠介、高山羽根子、小川哲をはじめ、酉島伝法、柴田勝家、倉田タカシなど両賞から輩出された数多くの才能、電子書籍やウェブ小説出身の藤井太洋、三方行成、そして他ジャンルからデビューの野崎まど、小田雅久仁―日本SFの未来を担う10作家を収録する、2010年代ベストSFアンソロジー第2弾。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
81
「バック・イン・ザ・デイズ」は既読。過去体験記憶を受け継いだ事で初めて知る父の思い、そして生活に追われ、なくなってしまった夢や擦り減ってしまった想像力への哀惜が、今に滲みて泣きたくなる。「スペース金融道」は宇宙を股に掛ける取り立て屋コンビが挑む陰謀を描く。黒幕がユーセフが突き付けた事は人間の欲深さを知るとまた、真理なのだ。「流れよわが涙、と孔明は言った」はディックの某作品じゃありません(笑)こんなにツッコンだSFは初めてだし、脳内が馬謖ゲシュタルト崩壊しかけたわ!しかし、オチは切ない…のだがその過程が、ね2020/06/01
ずっきん
72
小田氏目当てで。ちびちびと読む。傑作選だけに、SFと銘打ってても作風は幅広ーく、とても楽しかった。目当ての『11階』は初っぱなに堪能。現実と幻想の往来、その描写の見事さと余韻に嘆息する。既読の『スペース金融道』はいうまでもなく『バック・イン・ザ・デイズ』『うどん、きつねつきの』『従卒トム』が好み。なんつっても『流れよわが涙、と孔明は言った』タイトルでも笑うのにニ行目から凄かった。電車読み厳禁の一編。ジャンルの壁などものともせずに世界を構築するSF作家と呼ばれる方の表現力って、本当にすごい。2021/12/27
シタン
34
2010年代SF傑作選、若手中心の二冊目で繰り広げられるのは、SFを愛する者たちの戯れ。良い意味ではっちゃけている。中には、ふざけてるのか?ってのもあるが(笑)。特に三方行成「流れよわが涙、と孔明は言った」と野﨑まど「第五の地平」の破壊力はすごい。笑う。そんなのありかよ。こんなのが傑作選に載るというSFの懐の広さというか、なんでもあり感というか、そういうのがまた良いですね。監視社会、宇宙借金取り、異形生物、VR、三国志、幕末、超ひも理論、ポストアポカリプス、幻想文学。アイデアも文体も構成も、多彩すぎる。2020/05/02
なっぱaaua
30
傑作選1はベテラン作家だったが、こちらは2010年代デビュー作家さんのBEST。スペース金融道(宮内悠介)・流れよわが涙、と孔明は言った(三方行成)・第五の地平(野﨑まど)は既読。どれも興味深い短編集でした。『1』の時に大森望セレクトって書いちゃいましたが、両巻とも大森氏と伴名練が協同してセレクトしたとの事。どちらがどれを選んだかは分からなくしています。好みは既読と「うどん、きつねつきの(高山羽根子)」「従卒トム(藤井太洋)」「11階(小田雅久仁)」。SF界は大賑わいですね。~続く~ 2020/08/06
Aminadab
29
『2』には2010年代デビュー組を収録。『1』は既読4篇だったが、こちらは1篇のみ(西島伝法「環刑錮」)。まず、小川哲、高山羽根子、藤井大洋、倉田タカシ、いずれも収録作は初読みだが、いやはやどれも小説がうまい。小説のうまさだけからいえば平均値で『1』を上回るのではないか。その中でも群を抜くのが小田雅久仁「11階」で、手厚く周到なのに冗長にならないこの叙情性には堪能。私はSFは中・短篇をアンソロで読むものとほぼ決めているのだが、書店で平積みになっている『残月記』をこの際買って読んでしまおうかと思わされた。2023/05/20