出版社内容情報
現代最高のエンターテインメント巨篇、文庫化
第35回日本SF大賞受賞作2020年、〈メテオ・ニュース〉の木村和海が
衛星軌道上で発見したデブリの不審な動きは
前代未聞のスペース・テロの始まりだった。
藤井 太洋[フジイ タイヨウ]
内容説明
“サフィール3”の異常な機動から、国際宇宙ステーションを狙う軌道兵器であるという噂が広まりつつあった。北米航空宇宙防衛司令部のダレル・フリーマン軍曹は事態の調査を開始、いっぽう著名な起業家ロニー・スマークは、民間宇宙ツアーPRのため娘とともに軌道ホテルに滞在しようとしていた。調査を続ける木村和海は、すべての原因が新型の宇宙機“スペース・テザー”にあるという情報をイランの科学者より得る―
著者等紹介
藤井太洋[フジイタイヨウ]
1971年奄美大島生まれ。2012年、ソフトウェア会社に勤務する傍ら執筆した長篇『Gene Mapper』を電子書籍で個人出版。異例の話題を呼んだ同作は、大幅な加筆修正を施した増補完全版『Gene Mapper‐full build‐』(ハヤカワ文庫JA)として、2013年に商業出版された。続く2014年、第2長篇となる『オービタル・クラウド』で第35回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
176
読書スピードが、上巻の停滞が嘘のように進む進む!分かれて動いていた人々が結び付いて、チームものの面白さが爆発したようだった。サスペンスとしての展開も上手く、次がどうなるか予測がつかないのが楽しい。とは言え全編を通じて科学の専門用語が読み辛いのは変わらず、その辺がド素人にも馴染めるように工夫されていたら、多くの人に読まれる作品になるのに…と惜しい気がする。更に、用語に割かれた文章分を人物の肉付けに使えば、深みの出る名作にもなると思う。エンタメとしては充分なのだが、大きな可能性を感じるだけに苦言を記した。2018/01/09
ナルピーチ
161
多視点で描かれる物語は確信に近づくに連れてどんどん集約されていく。様々な立ち位置にいる登場人物達の対峙と駆引き、情報戦に加えて銃撃戦と、臨場感ある展開が繰り広げられていく。自身の知識が本書に追いついていない面もあり、出てくる用語についていけない部分もあったのが残念でならないが、その雰囲気を十分に堪能できた。宇宙への夢と希望をみせてくれた作品、活字で読むよりは映像化した方がイメージしやすいので誰か映像化してください!2022/01/30
サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥
147
いやいや、日本にもこんな面白い小説があったとは!ハードSFをベースにした近未来テクノスリラー。日本、アメリカ、イラン、そして宇宙を舞台にストーリーが展開する。人々を恐怖に陥れる大規模なスペーステロ。「大跳躍」とは何なのか。後半もページをめくる手が止まらない。2020年というホンの先の出来事だが、ここに書かれてのはほぼ現在の技術で実行可能という。キーとなるテザー推進でさえ実験段階だそうだ。最後までドキドキハラハラ。壮大なスケールのエンターテイメント。個人的には伊藤計劃以来の大ヒット。五つ星です!★★★★★2016/06/17
パトラッシュ
76
(上巻から続く)エンタメの王道作品として楽しく読んだが批判すべき点も残る。第一に短すぎる。登場人物の仕事ぶりは描かれても彼らの内面や日常はあっさり触れられる程度しかない。第二に政治描写が弱い。技術面でのサスペンスに集中するあまり情報関係者の描写がおざなりで、背後に存在する国際政治は書割扱いだ。日本の公安警察が登場しないのはさすがにどうか。第三に明確な犯行動機がない。ラストで白石が語る彼の理想は、これほどの大事件を起こした理由としては弱すぎる。これらが詳細に書き込まれていたら一層読み応えを増していただろう。2020/05/15
スカラベ
70
綺麗すぎる嫌いはあるが、重厚で骨太なSF小説。下巻に入ってから、サスペンス色も強くなり、次から次へと話が展開し、振り返る暇もなく惹き込まれて読了。事は地球を取り巻く軌道上で展開されるため、身近な宇宙ではあるが、専門分野の技術用語は相変わらず多発。しかし、両端のスマホレベルの機械を長い金属の「紐」でつなげた壮大なスペースクラフト=「スペース・テザー」の概観が目の前に浮かぶようになれば、読み進むには何の支障もない。魅力的な登場人物と精緻かつ大胆なストーリーがインストールされた極上のエンターテインメントでした。2016/06/20