出版社内容情報
極寒の王国〈緑の凍土〉が危機に見舞われたとき、王子ディアスの選択が未来を切り拓く
内容説明
伝説の獣サルヴィの角に支えられた王国(緑の凍土)では、新たな角を持ち帰ることが次王の証とされていた。災厄に疲弊した王国で後継者争いが起きるなか、王子ディアスは異母兄オブンの奸計により故郷から追放されてしまう。絶望した彼は、夢に出てきたサルヴィが歌った地(赤き海)へ向かう。その旅路は、ディアスが運命を受けいれ、王国の未来を選択するための試練でもあった。『夜の写本師』の著者が描く新たな傑作登場。
著者等紹介
乾石智子[イヌイシトモコ]
山形県生まれ、山形大学卒業。1999年教育総研ファンタジー大賞受賞。2011年に刊行された『夜の写本師』にはじまる「オーリエラントの魔道師」シリーズで注目を集めて以降、本格ファンタジイの担い手として活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
127
かわいらしい表紙からは想像もつかない重厚なファンタジー。架空王国「緑の凍土」を舞台に劇的な物語が展開する。王の三男ディアスが過酷な試練を経て自分の国に癒しをもたらすのがメインのプロット。悪の象徴である竜の描き方がうまくて、竜に憑かれて権力に固執する登場人物を描く作者の筆は冴えていた。ディアスが竜の存在に取りこまれて、自分の生き方を選択する場面に一番惹きつけれられた。優れたファンタジーは、この場面のように自分の中にある倫理観を揺さぶる力がある。作者の文章は色彩豊かで美しく、宮沢賢治の文体に似ている気がした。2016/03/27
桜父
37
今まで読んだ乾石智子作品では、あっさりとしていた印象が強いが、楽しく読めました。「ディアス」の養父母の「マイハイ」と「ムッカ」が良い味出していた。乳兄弟の「イェイル」が大きな役割を果たすとは思わなかった。「アンローサ」の侍女「ナナニ」のその後が大変気になります。2015/04/11
眠る山猫屋
36
優しげな表紙に騙されてはいけない。舞台は寒冷地にある王国。王位後継者であるディアスは、臣下の家族として育ってきたが、数年おきに訪れる疫病を斥ける為、旅に出る・・・。序盤はスローペースだが、陥計に嵌まり追放されるディアスと、幼なじみのアンローサがそれぞれ南北へ逃げ延びて行く辺りから俄然面白くなってくる。アンローサに付く侍女ナナ二が良いキャラクター。敵の間諜でありながら、主人公たちに心を寄せるナナ二。惜しむらくは、多分長編を想定したのだろう、登場人物の書き込みがもっと読みたかった。甘くない神話物語。2019/02/28
いちろく
33
めでたしめでたしで終わるお話は本当にハッピーエンドなのか?夢や希望を与えてくれるファンタジーも魅力的だけれど、生きていく上で避けては通れない大切な事を教えてくれるファンタジーも素敵じゃない。生きていく事は、何かを犠牲にして、その上に成り立っているのです。伝説の獣サルヴィの角に支えられた王国を舞台に繰り広げられる少年と少女の成長譚。このお話は、終わりではなく始まりの物語。2015/11/02
うめ
29
極寒の地に生きる人の生活がみずみずしい。人は何かの犠牲の上に生かされているのに、容易くそれを忘れて我が身の不足を呪い、満たされている今を有りのままに受け入れようとしない。それは満たされない赤き竜が総てを手にし、思うがままに振る舞うよう。対し、相反するはずの生も死も飲み込んで、是、とする月は。時に非情に映るかもしれないけれど、とても優しい。甘いだけじゃない、厳しさと不条理も学べるファンタジー。感情に振り回される若い彼が旅を経て父王の苦悩を肌で感じるようになる、人としての成長をそう表した手腕が好き。2015/03/12