出版社内容情報
ジャンルを越境し多岐に亘るテーマを描き続けるベテランによるSF作品の最高峰を精選
内容説明
延々と繰り返しの続く日常生活に倦み突如失踪した男が、月日を経て異常な日常へと回帰する書き下ろし表題作をはじめ、南洋の島の民族的多様性の喪失を描く文化人類学SF「まれびとの季節」、荒廃した近未来で「神の子」と呼ばれ隔離されていた少年少女たちの恐ろしい真実「子羊」など、書籍未収録作品3本を含む10短篇に加え、エッセイ、インタビュウも収録。ジャンルを越境する偉才の傑作を精選したベストSF短篇集。
著者等紹介
篠田節子[シノダセツコ]
東京都生まれ。東京学芸大学卒。1990年『絹の変容』で第3回小説すばる新人賞を受賞、91年に同作でデビュー。SF、ミステリ、ホラー、幻想小説、恋愛小説など多様な作品を通して、数々の社会問題や芸術(音楽・絵画)、宗教などの大きなテーマ・観念的テーマを扱う。97年『ゴサインタン神の座』で第10回山本周五郎賞を、『女たちのジハード』で第117回直木賞を受賞。2009年『仮想儀礼』で第22回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
402
10の短篇を収録。内訳はSFの手法を用いたもの、オカルトっぽい要素のもの、民俗社会をえがいたものと多様性に富む。篠田節子氏は長編では執拗なくらいに細部を組み立てていくことで強固なリアリティを構築していくが、短篇においての世界構築は、思いきりがよく大胆である。これらは篠田節子氏にとっても自信作のようで、いずれも捨てがたい魅力に溢れているが、強いて言えば、シュールな小説作法を駆使しつつ、幻想的で神秘的な味わいを持つ「コヨーテは月に落ちる」がベストか。また、氏が得意とする音楽を扱った「ソリスト」も凄まじい。2019/03/03
kaizen@名古屋de朝活読書会
147
SF短編集。書籍初出「沼うつぼ」「まれびとの季節」「人格再編」「ルーティーン」「篠田節子インタビュウ」。既出「短編小説倒錯愛」(寄り道ビア補0留)「子羊」(静かな黄昏の国)「世紀頭の病」(天窓のある家)「コヨーテは月に落ちる」(レクイエム)「緋の襦袢」(死神)「恨み祓い師」(コミュニティ)「ソリスト」(秋の花火)。SFとはいうものの、恐怖小説、幻想小説の要素があるものあり。結果的に篠田節を楽しめる。 2014/11/14
藤月はな(灯れ松明の火)
57
華暗がりの中に愛おしき死者の姿を見て愛欲地獄に曳づりこまれるような『妖桜記』で篠田作品デビューしてから数年。篠田節子作品を読むのはこれが二作目となりましたが「これは凄いものを読んだ!」としか思えませんでした。迷宮化したマンションの中を彷徨いながら孤高のコヨーテに愛着を抱く公務員を描いた「コヨーテは月に落ちる」、男女の生殖機能成熟の反転をシニカルに描く「世紀末の病」、文化人類学や歴史を学んでいる者は垂涎ものの「まれびとの季節」が好きです。そして恨みの描写がえげつないまでに上手くてついつい、頷いてしまいますw2014/06/20
絹恵
50
例えば外国映画を字幕で観るときの集中や、頭のなかで鳴りやまなかった音がたった一言で止まる瞬間が詰まっていました。変わる世界のなかで、変わらないものは自身を突き刺す後悔や呪いのような情念しか残っていないと感じることがあります。だからこそ未来を見るより過去を想うけれど、繰り返される未来と過去の狭間で、極彩色のなかから染まらない白と黒を探すことは諦められない。諦められないことは変わらない。2014/11/13
ソラ
48
前の方も書かれてましたが、篠田さんのSFは生々しいというか現実感のあるSFだなぁという印象。不気味な感じがもありホラー的な風味も2014/02/28