内容説明
青澄は、アジア海域での政府と海上民との対立を解消すべく、海上民の女性長・ツキソメと会談し、お互いの立場を理解しあう。だが政府官僚同士の諍いや各国家連合間の謀略が複雑に絡み合い、平和的な問題解決を困難にしていた。同じ頃“国際環境研究連合”は、この星の絶望的な環境激変の予兆を掴み、極秘計画を発案する―最新の地球惑星科学をベースに、この星と人類の運命を真正面から描く、2010年代日本SFの金字塔。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県生まれ。『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、同作でデビュー。2010年にハヤカワSFシリーズJコレクションから刊行した長篇『華竜の宮』は、雄大なスケールの黙示録的海洋SF巨篇として書評家、読者から支持され、「ベストSF2010国内篇」にて他を圧倒して第1位を獲得、第32回日本SF大賞も受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
128
生物に改変を加えるのは神の所行。人類がその所行に及んだとき、想定を超えた結果が待つ。なぜなら人類は神のように全知全能では無いのだから。上田氏は神の視点で終末を迎えた地球を描いた。この世界観は、ただただスゴイの一言だ。終末を迎えた地球、その極限状態にあっては人間的な主情など無駄を通り越して、ただのお荷物でしかない。しかし、上田氏はロマンティシズム、ヒロイズム、リリシズムにあふれた主人公に終末世界の希望を託した。人類滅亡が必至と思われる世界をタフに、しかし主情的に生きようとする主人公の物語はハードボイルドだ。2013/10/17
Miyoshi Hirotaka
104
星の寿命を迎えたガミラスは遊星爆弾で地球の環境改造を試みた。一方、生存圏が危うくなった人類は放射能除去装置獲得の途上、ガミラス星に壊滅的な破壊をもたらした。種の存続が危うくなった時の判断と行動に倫理も善悪もない。この本が描く未来は、惑星間航行の技術は棄却され、全資源がバイオ、AIに投入され、人間を環境に適応させる技術が成熟。陸上民はAIと海上民は魚類と一体。姿形がさらに変容しても人間であり続けることは可能か、あるいは、特異点を越えた時に人間ではなくなるのか。見ることのできない結果を生むトリガーが引かれる。2017/01/30
けい
95
長い長い時空の旅を終えた感覚で本書を閉じました。近未来の地球に起こる大きな変化、その上で暮らしていく人類を含む生命の営み。人として正しくあろうとし、愚直とも言えるほどにまっすぐな主人公とそれに影響され続ける人工知能。エピローグで描かれる崇高ささえ感じる生命の生きていく権利の主張。とてつない世界観に、ただただ圧倒された作品でした。2014/05/29
ゆかーん
83
上巻に引き続き、圧倒的な世界観に見事にやられました!!ホットプルームによる都市壊滅と、政府と海上民たちの対立。そんな様々な危機的状況を救う鍵となるのが、ツキソメの特殊な遺伝子や身体構造。地球の未来を救うために、政府はあらゆる手を尽くして彼女を捕獲しようと企てます。青澄は双方の理解ある話し合いを求めようと、必死になるのですが、話し合いは平行線のまま…。しかし、青澄のアシスタントである「マキ」の存在が、この事件を解決へと導きました。人口知生体の存在は、これからの地球の未来に重要な要素をもたらす気がします。2016/04/12
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
81
下巻は外交官・青澄と海上民の長・ツキソメを軸に話が進む。政府官僚同士の諍いや国家連合間の謀略が複雑に絡み合う。更に絶望的な環境激変が・・・・。大変面白かった、非常にスケールの大きな物語でした。単にSFとしてでなく、地球環境の劣化、異文化との交流、遺伝子操作の功罪、そして人類とはいったい何だろうか?そういうことを考えさせられました。読友さんの感想から知った作品ですが、最近はSFからは少し遠ざかっていたので、読メで見なければスルーしていた作品でした。知ることができて良かったです。文句なし五つ星です。★★★★★2013/08/17
-
- 和書
- 女性技術者の現場