出版社内容情報
冬子、隼人、美鳥、スオウ……四人が出会ったとき、幼い心に刻まれた罪が明らかに。繊細な心の揺れを瑞々しく描く青春ミステリ。
内容説明
美しく奔放な従妹の冬子に、隼人は高校生にいたる今まで、悩まされていた。冬子は友達を作らず、隼人が親しい友人を作れば恋を仕掛けて奪い捨てる。そんな冬子が初めて連れてきた女友達が美鳥だった。だが隼人の目前で、美鳥がドッペルゲンガーを見たと言って倒れ…喪った命と絶望の記憶に苛まれる少年少女が出会うとき、幼い心に刻まれた罪の時間が動き出す。痛ましいまでに繊細な、煌めく若者たちの青春群像ミステリ。
著者等紹介
石野晶[イシノアキラ]
1978年生まれ。岩手県立伊保内高校を卒業後、2007年に『パークチルドレン』(筆名:石野文香)で第8回小学館文庫小説賞を受賞。2010年、『月のさなぎ』で第22回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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toshi
67
長篇青春小説。冬子と隼人は仲の良いいとこ同士。友達以上恋人未満の関係を続けますが、そこに美鳥とスオウの二人が加わり、事態を複雑化させます。果たして4人の青春の行先は?痛々しいまでの関係性や、傷を負った高校生達の健気さに胸を打たれました。本書は死と罪についても語られており、ミステリー小説としての側面もあります。2025/03/29
財布にジャック
64
勿論作られた話だから現実にはこんなことは絶対に無いとは思いますが、それにしても想像以上に、なんとも重く辛い話でした。その内容に反して、読みやすいのでさらっと読めてしまうのが、アンバランスな気がしました。そしてもう少し登場人物達の年齢設定が上だと良かったかもと思いました。青春の1ページと言うには苦すぎて哀しいお話でした。2013/08/10
ひめありす@灯れ松明の火
62
息をする事が、こんなに辛い事だなんて思わなかった。胸の奥、内臓の位置まで掻き乱す様に夏の夜に薔薇が香る。美しき女王と従僕な騎士。誓いでも愛憎でもなく罪の咎で縛られた主従関係。奪いながら赦しながら、濃密に淫靡に醸造された二人きりの世界。何というLes Enfants terribles。 罪の共有は、互いを決して楽にはしない。瞳の中に自分への憎悪を見出す朝。罪に跪き泣きながら赦しを請う夜。光の下に逃げ出す時もあるだろう。それでもそれは赦された贖罪。空の香水瓶に花びらの雫を静かに貯める様に癒され赦されていく。2012/08/03
ちはや@灯れ松明の火
60
正しくなどない、聖らかにもなれない、ただ静かに口を噤むだけ。安らかな日々を浸していく闇、噎せ返る背徳の香、崩れ堕ちていく音。大切なものを護るために手を穢した、あの日から棲みついたままの毒。傷を舐めあいながら、刔りあいながら、絡みつくように寄り添う。時を重ねる毎に増す罪の重み。何者も立ち入れないふたりだけの鳥籠を覆う棘、ひたすらに祈る程締めつけられる呼吸。赦される筈もなく、救われることも望まない。苦しみを感じ続けることが、血を滴らせることが、今ここに居る証。あなたの声が聞こえる限り、生き抜いていくと誓える。2012/08/11
おかだ
54
う~ん、つらい話だった。幼い頃に衝撃的な事件があり、その呪縛から抜け出せない高校生男女4人の青春物語。美しい従妹の冬子に振り回される隼人、隼人から全てを奪う事しかできない冬子、記憶を無くした美鳥、ドッペルゲンガーのスオウ。綿菓子みたいにふわっふわの柔らかい美少女に激似瓜二つのドッペルゲンガー=切れ長の目をした男子(わりと武闘派)っていうのがなかなか想像し難くて困った。彼等の背負った過去が本当に重すぎて、ラストは晴れやかに終わっていくけど沈鬱な気持ちで置き去りにされた。彼等の未来に幸あれ…。2018/11/04