内容説明
すべての子どもたちが人工授精で誕生し、掌にノードを埋め込まれて生活する時代。人々はノードを介して情報や思念を交換する。中2の少女、不動火輪と滝口兎譚は授業の自由課題で小学校の遠足バス転落事故を調査し、死亡前の生徒の思念記録を偶然手に入れた。その記録に関わる大きな陰謀と、二人の家庭の事情が複雑に絡み、遂に事件は勃発する―大人世界の不条理に抗う少女たちの絆を描く、俊英作家の新世代青春小説。
著者等紹介
森田季節[モリタキセツ]
1984年生。兵庫県神戸市出身、京都大学卒。2008年第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞。受賞作『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒダン
15
新種のウイルスや思念によるコミュニケーションなどSFの要素と数種類の信仰の体系としての新興宗教を盛り込むという意欲的な設定。それでもラノベ的なキャラクターとシンプルで王道なストーリーが組み合わさって爽やかに読める。不動明王をインストールしたり、個人の幸福の追求を分人論的に解釈すると多重人格が至高という結論になったり、発想が面白い。終わり方は設定を回収しきれなかったようにも感じるご都合のよい展開。2017/08/17
おくりゆう
14
SF的な要素に並んで宗教的な要素も混じった、それでいて裏表紙にあるような青春(少女同士の絆)を描いたなんだか不思議な作品でした。思うところもありますが、中々面白かったです。2016/01/01
しろ
11
☆6 SFと百合を下敷きにして宗教とか神学を描いた作品。性交をすると死んでしまう病気の蔓延により、全ての子供が人工授精で産まれるようになった世界。念話ができたり監視システムがしっかりしていたり、魅力的なSF世界だと思うのだが、途中からはそこよりも「神とは」「思念とは」みたいなことが中心になってくるのもまた面白い。性交がほぼないこの世界だから同性愛への忌避もないので百合もなんだか爽やかでいい青春。人だけが地球上の思念と外れているっていう考えはもともと好きだし、神と同化するカリンもなんか少女漫画的で良かった。2013/02/19
ラグエル
7
神を「いんすとおる」するという考え方が面白い。「さとり」が一般化しちゃっている。「国」という意志からの指示とか、もっと政治的陰謀に絡んだ話かと思いきや、フタを開けたらファンタジーだった。嫌いじゃない。だって、SFだもの。サイエンスファンタジーだもの。科学技術とか倫理観を手玉にとってるところ、新しいと思う。2011/08/08
ついたことなし(凍結)
7
魅力的なユートピア/ディストピアSF設定を配置し、序盤では現代サブカルチャーに対する皮肉も感じさせ、謎を仄めかす都市伝説的なホラー要素も、と様々な伏線が敷かれるが、物語に進むに連れて未来的なガジェットは神々との対話に一役を買い、救済とは?宗教とは?家族とは?人の心とは?と様々抽象的で大きな疑問を掲げつつ、それらすべてを回収したのかしないのか急転直下の世界の中で少女二人は愛によって未来を勝ち取る……というなんかよくわからんがとにかくエモーショナルな作品。ここまで熱い百合(敢えてこう書こう)は見たことがない。2011/04/01