内容説明
9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。
著者等紹介
伊藤計劃[イトウケイカク]
1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』で作家デビュー。「ベストSF2007」「ゼロ年代ベストSF」第1位に輝いた。2008年、人気ゲームのノベライズ『メタルギアソリッドガンズオブザパトリオット』に続き、オリジナル長篇第2作となる『ハーモニー』を刊行。同書は第30回日本SF大賞のほか、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門を受賞した。2009年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
1208
これまで日本のSFの最高峰は神林長平の『膚の下』と位置付けていた。この作品を読み終わった今、あれは20世紀SFの金字塔であり、これはまさに21世紀の地平を拓くものであると思い至った。近未来テクノロジーのディテイルの確かさと強固なリアリティ。「本質は細部に宿る」のだ。そして、自分が殺した母と、一方ではルツィアへの、過去と現在の絶望的なまでの愛の渇望が喚起する抒情。テーマの持つ今日性―それは現在の世界の構造を看破するものであるかも知れない―そして、時間軸の先にあるものを見据えるスケール感は圧倒的でさえある。2015/10/18
吉野ヶ里
538
面白かったです。やっぱ、小説家って勉強してんだね。オチはあんまり好きじゃないけど。人間はそんなに大きな責任を負えるの? そこまでいくと人間ではないんじゃね、責任の概念は自由意思を伴うのはわかるけれど、それは社会の中でしか有用に機能しない気がする。人間の強度はそんなに強くないんじゃないかな。選択す「べき」なのはわかる。自由意思を信じたいのもわかる。でも、選択なんて「できない」って気もするんだよ。遺伝子や環境に罪を負わせられるのか。誰かを批判することは出きるか。2016/03/02
佐々陽太朗(K.Tsubota)
500
伊藤氏は9・11のあとの近未来社会でテロの驚異を根絶するために徹底的な管理社会を出現させ、絶大な力もつ国家を描くことで「正当化された殺人があるかどうか」という命題(この命題はドストエフスキーが『罪と罰』で問うた命題でもあるが)を読者に突きつける。そして「生まれたばかりの赤ん坊の心は真っ白な石版であって、その後の心や行動はすべて環境によって書き込まれる。従って人はみな平等だ」などという浅薄な”そうあるべきだ”理論に疑問符を投げかけているところがすごい。2011/02/11
Yunemo
488
消化しきれないまま読了というのが本音です。SFながら現実部分と折り重なって、どうにもついていけないところがありまして。グッと引き込まれる部分と、あからさまに突き放されたと感じる部分が錯綜して、戸惑います。自由っていったい何なの。人間の本性って何なの。突然のごとく提起される問題。答えられません。タダ一つだけ、主人公の実感が、現在の人間らしさに間違いなく伝わってきています。世界観という面では、ある意味でのリアルさがそのまま身に沁み込みます。2014/03/01
射手座の天使あきちゃん
455
人はなぜ大量虐殺を行うのか? オープニングには、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」がピッタリはまりそうな重厚なテーマでした。 人工筋肉で作られた侵入鞘(飛行物体)、脳の痛覚マスキング、バイオ認証技術の数々 もう圧倒的にSFです! エピローグに再び驚愕、ただただ堪能しました!! ε=( ̄。 ̄;)フゥ 2012/09/01




