内容説明
1959年12月、『S‐Fマガジン』が創刊された。初代編集長は福島正実。それまで商業的に成功したことのなかったSFを日本に根づかせるため、彼の八面六臂の活躍がはじまる。アシモフ、クラーク、ハインラインに代表される海外のSF作家を紹介するとともに、小松左京、筒井康隆、光瀬龍などの“新人作家”を世に出し、SFのおもしろさ、その可能性を広く紹介してゆく…SF黎明期における激闘の日々を綴る感動の回想録。
著者等紹介
福島正実[フクシママサミ]
1929年生まれ。編集者、作家、翻訳家、評論家。明治大学文学部中退後、早川書房に入社。1957年、都筑道夫とともに『ハヤカワ・SF・シリーズ』を立ち上げる。1959年12月、『S‐Fマガジン』を創刊。初代編集長として敏腕をふるい、それまで商業的に成功しなかったSFを日本に定着させるため、さまざまな分野で精力的に活動した。1969年、早川書房退社後も、『S‐Fマガジン』誌上に、創作、翻訳、ブックレビュー、科学エッセイなど旺盛に執筆。1976年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
124
SFマガジンの初代編集長だった福島正実氏の回想録。情熱的で熱い語り口に引き込まれて一気に読んだ。日本の文壇からは馬鹿にされ、出版社からは売れないと叩かれたSFの市民権を得るために、戦い続けた男の生き方が鮮やかに浮かび上がってくる。いろいろな人がSFを貶めようとした時に、それに反論するために論争を起こす作者の姿は痛々しいと同時に、編集者としての誇りを感じた。この本が未完になっているのは悲しい。福島氏は病のために47歳という若さで、本書の執筆中にこの世を去ったのだ。2016/08/14
ヒデキ
43
子どもの時、初めて読んだジュブナイルからあったお名前が、「福島正実」さんでした。 彼が、SFマガジンの初代編集長で日本のSF作家の育成に多大な貢献をされてきたことを知ったのは、だいぶ後のことでした。 彼を中心とした先駆者の取組みが無かったら 我々が、小学校時代からSFに触れることも無かったかもしれないと思いました 未完のこの本の絶筆時には、まだ、40代・・・ 言いたいこともやりたいこともいっぱいあっただろうなと思ってしまえる熱い思いの本でした2024/01/15
tomi
24
福島正実の名前を知ったのは確か「夏への扉」の訳者としてだった。翻訳家、作家として活躍しながら、初代「SFマガジン」編集者としてSFの普及に尽力した著者の回想録。とにかくパワフルで熱い。生前、敵が多かったというのも頷ける。低俗な大衆読物と見做され、偏見が多かったSFへの誤解を正すべく、各所に論争を挑む。それが時に空回りもするが、この情熱がSFの発展の下地を作ったのだろう。急逝により未完に終わったのが残念。多くの作家を敵に回した匿名座談会の顛末なども読みたかった。2024/05/17
亮人
24
「SFの鬼」ことSFマガジン初代編集長・福島正実の回想録。まだ日本という国にSF自体が浸透していない時代にゼロからSFマガジンを立ち上げ、正しいSFの普及のために様々な議論を巻き起こしていくバイタリティはすごい。熱すぎる。しかし「こうであらねばならない」という信念を周囲にも要求するのは堪えるなー。まあその力強さが良い方に展開して、今のSFがあるんだから、感謝です。2012/11/09
GaGa
21
日本に根付いていなかったSFという文学を開拓したパイオニアの一人、福島正実の回顧録。しかし、筒井康隆という人はやはり天才だったのだなあとつくづく思った。眉村卓ぐらいの人でも、自分の才能を疑ったりするのだなあ。などなど色々と思いが過りました。2010/09/09