内容説明
城南大学病院に勤める女性産科医・柊奈智は、深夜の当直で容態が急変した妊婦に緊急帝王切開手術を行なう。ギリギリの判断が幸いし、子供は無事に生を受けた。だが喜びもつかの間、数日後に原因不明の出血が母親を襲う。医師たちの懸命の治療の甲斐もなく、出血の原因がわからないまま、母親は死亡してしまった。患者を救えなかったことでショックを受ける奈智。だが、それは、さらなる試練の始まりに過ぎなかった…。
著者等紹介
岡井崇[オカイタカシ]
医学博士。昭和大学医学部産婦人科学教室主任教授。昭和大学病院総合周産期母子医療センター長。1947年和歌山県生まれ。1973年東京大学医学部を卒業後、東京大学医学部助教授、総合母子保健センター愛育病院副院長等を経て現職にいたる。日本医学会評議員、日本産科婦人科学会常務理事、日本周産期・新生児医学会副理事長、日本超音波医学会理事長、東京都周産期医療協議会会長ほかを勤める。今年より実施された産科医療補償制度では、原因分析委員会委員長に就任した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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dr2006
26
「ノーフォルト」とは無過失という意味だ。大学病院の産婦人科を舞台とした本格医療ミステリー。作者が医学博士であるため、専門用語が頻出適格で手術シーンの描写がリアルだ。昨今の医師不足等大学病院が抱える様々な問題、医療事故をめぐる裁判。主人公の若手医師柊奈智が様々な試練にさらされる。下巻も含め一気読みした。2016/11/04
James Hayashi
20
、現役の医学部教授の書かれたもの。婦人科医を英語でgynecologistといい、そこから「ギネ」というドラマのタイトルになった。前半は専門的な用語が飛び交い、病院内の様子が淡々と語られ面白みがないが、後半から話が深刻化する。産婦人科で働く奈智は深夜の当直で緊急帝王切開を行うが、患者は数日後死亡。何が起こったのか把握できず原因究明も進まず…………医療の危機の一面を鋭く描いているが、下巻は如何に。2016/06/16
ちょん
16
ドラマ「ギネ」の原作なんですね。ん~。さすが現役医師執筆だけあって、手術シーンなどはとってもリアル。切迫した緊張の場面がわかりやすく書いてある。医師と患者、患者家族、責任の所在など考えただけでも、頭が痛くなる。医師はすごい。最近の医療事故に対する姿勢を考えさせられた。医師と患者の太い信頼関係が大切。2013/09/03
komorebi20
12
産婦人科医の過酷な勤務の実態は、この小説以上ではないかと思う。女性が命をかけて出産した子どもの命は尊いのである。だからこそ産婦人科医の責任が重い。医療過誤で訴訟が多いのは、産婦人科医であり、そのため医師不足が深刻だ。地方では、それが顕著で私の市にも出産できる病院が無くなった。 母体死亡した家族の悲しみも医療者側の苦悩も理解できるストーリーだった。2022/12/26
きゅ
11
本格的な医療ものって意外と読んだことないな...と思い手に取った。専門用語が頻出するので初めは戸惑ったがすぐ慣れるし読みやすい。母体死亡という悲劇もさながら、自分の手技不足(の可能性)で母親を救えなかった主人公の苦悩を思うとしんどい。著者は医師であることもあってリアリティや緊迫感は半端なものではなく、読んでいて本当に辛く心臓が痛くなる。あまりのリアリティに読んでいて疲れたし出産が怖くなってしまった。これから訴訟になるのかと思うと下巻もなかなかに辛くなりそう。双方とも救われる未来が見えない。2022/03/25