内容説明
夢を見ない理由、死体に似た街、腐敗してゆく自分、地下室で蠢く父、時の王国におわす神、娼婦工場の太った女、演歌と神秘主義の密接な関係、妄想を媒体にする言語人形―現実の皮が剥がれたときに見え隠れする幻覚妄想恐怖戦慄神秘奇蹟を、ヒステリーの治療過程に見立てて並べてみせた、凄絶作品集。『傀儡后』で宇宙的悪夢を描いて日本SF大賞を受賞した牧野修が虚空の果てに見いだした、甘美なる知恵。
著者等紹介
牧野修[マキノオサム]
1958年大阪生まれ。大阪芸術大学芸術学部卒。高校時代に筒井康隆主宰の同人誌「ネオ・ヌル」で活躍後、1979年に「奇想天外新人賞」を別名義で受賞。数年の沈黙ののち、1992年に「ハィ!ノヴェル大賞」を長篇『王の眠る丘』で受賞、同書にて“牧野修”としてデビュー。1996年、特異な言語感覚に満ちたドラッグ小説『MOUSE』で、高い評価を得る。1999年、『スイート・リトル・ベイビー』で、第6回日本ホラー大賞長編賞佳作を受賞。2002年、『傀儡后』で、第23回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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miroku
20
牧野修的狂気の幻想を堪能。やはりこの人はちょっとオカシイ♪2016/06/07
ささやか@ケチャップマン
13
圧倒的な狂気と才覚に基づいて書かれた傑作短編集。引っ越しする際、餞別で人にあげてしまっていたのをようやく再入手して再読。最悪の形で「ここではないどこか」に行ける【いつか、僕は】、目が回るような異世界【踊るバビロン】、時間を崇めた国の興亡【バロック あるいはシアワセの国】、演歌と神秘主義を合体されたウルトラC【演歌の黙示録】、かつて宇宙的人気を博した芸人の矜持を示したSF【或る芸人の記録】等々。やっぱ牧野修は凄いなあ。濃密な読書をしたい人で、エログロシュールなんでもこいなら確実におすすめ。大好き。2020/03/20
しろ
13
☆5 どうレビューすればいいのか全く分からんけど、すごい短編集だった。いちおうSFなんだけど、話の筋自体はかなりキワモノ。思想や哲学感がSFっぽかったかな。解説が平山夢明なのも妙に納得する感じ。こういうのを読むとSFが自由な表現方法で、人間の本質を描くことができ、純文学に近いと感じる。奔放で幻想的な作品ばかりだけど、なぜかそこに人間性や精神、時間をも描きだそうとしているのがわかるような一冊だった。2012/06/11
策太郎
10
知人に勧められたのを契機に読んでみた本書。そしてその世界観に圧倒された、正直最初はなんなんだ?という状態だったが、その話をかみ砕けるようになってから一気に面白さがわかった気がする。好きだったのは「そして、僕は」2017/05/29
レイ
7
何だかもういい意味でイッちゃっているものだから読み進むごとに「いいぞ、もっとやれ!」なんて思ってしまった。得体の知れない黒い物体と汚物に似たもので出来た万華鏡のような作品集。「インキュバス言語」、「バロック あるいはシアワセの国」、「演歌の黙示録」、「或る芸人の記録」、「逃げゆく物語の話」が気に入っている。また「付記・ロマンス法について」は、こういう作品を書く著者の気骨を感じた。もっと読みたいと検索すれば著者の作品はほとんど絶版。古本で探すか。だって病み付きになってしまったから。用法にはくれぐれもご注意。2014/12/09