内容説明
400日ぶりに東京に帰ってきた私立探偵沢崎を待っていたのは、浮浪者の男だった。男の導きで、沢崎は元高校野球選手の魚住からの調査を請け負う。11年前、魚住に八百長試合の誘いがあったのが発端で、彼の義姉が自殺した真相を突き止めてほしいというのだ。調査を開始した沢崎は、やがて八百長事件の背後にある驚愕の事実に突き当たる…沢崎シリーズ第一期完結の渾身の大作。文庫版書下ろし掌編「世紀末犯罪事情」収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
296
間違いなく面白く、第一期終了にふさわしい内容。作品単体で見ると、魚住との邂逅までに時間をかけすぎであるし、中盤まで高校野球の八百長を下敷きに進行してきて、終盤でいきなり能の家元が重要な役割を持って出てくるあたりに流れの断絶がある。無計画に書き進めた連載物のような散らかり方を随所に見せる反面、その中でこそ生まれる余地のあった、過去作品登場人物のカメオ的出演や、お馴染みのメンバーである相良や錦織とのアレコレが、キャラ披露の場面として存分に活かされており、最大の魅力となっている。皮肉で笑える比喩も絶好調。2023/06/21
ミカママ
287
読み友さんの好意により、シリーズ遡って全作読ませていただいているが、いよいよこれが(未読としては)ラスト。400日間、東京を離れていた沢崎、帰京したと同時に新たに事件依頼が...。カッコいい!面白い!ので、それほど長さは苦にならないんだが、やはりもっと校正のしようがあったんじゃないかな。事件の真相も、ええぇ?的な。とはいえ、以降新作は望めそうもなく、これがラストかと思うと寂しい。実はあたしは、橋爪のファンでした(笑)2017/12/09
タックン
102
原りょう4冊目。(私が殺した少女)に並ぶ傑作だと思う。 11年前の高校野球の八百長事件の嫌疑をかけられた男とその姉の自殺の謎を追う探偵沢崎・・・・。真相は本当予想もしないほどの驚愕の事実だったな!!その事実の前に沢崎が真相を暴いて題名のごとく長い眠りを覚ましたのがよかったのか?悪かったのか?でも自分たちを守るためにあんなことしてはダメだよなあ・・・。少女2人の人生が悲しい。とにかく面白いのでお勧め。また再読しよう。2018/05/07
アッシュ姉
94
持ち歩くには重かったが、ずっと読んでいたいほど面白かった。何気ない仕草や沢崎が放つ台詞の一つ一つが渋いのなんの。心の声も面白くて、クスりとしたりニヤりと笑えて楽しかった。痺れてたまらん。一文たりとも見逃したくなくて、じっくりゆっくり堪能。一つの依頼を追った長編で登場人物も多いが、しっかり書き分けられており混乱せずに集中できる。十一年もの年月を遡って真相を追求していくが、じれったさが微塵もないのが凄い。探偵に任せておけば全て詳らかにされるのだ。作品の中に入り込み、酔いしれることができる極上の読書体験に感謝。2019/09/27
chiru
93
高校野球の八百長工作と自殺の関連の調査を依頼される沢崎。 口では罵りながら沢崎を救い出すヤクザや、錦織刑事と沢崎の間にふと見える友情が好き。 沢崎のセリフ『私は”さよなら”という言葉をうまく言えたためしなど一度もないのだった。そんなことを適切なときに言える人間とはどういう人間のことだろう』深くてかっこいいな。 こういうセリフで、ラストのどんでん返しに切ない余韻が生まれるのかも。 ★4 2018/02/15