内容説明
ある女のひとを守ってほしい―沢崎の事務所を訪れた十才の少年は、依頼の言葉と一万円札五枚を残して、雨の街に消えた。やむなく調査をはじめた沢崎は、やがて思いもかけぬ銀行強盗事件に巻き込まれることに…私立探偵沢崎の短篇初登場作「少年の見た男」ほか、未成年者がからむ六つの事件を描く、日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞受賞の連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
327
もともと味のある文章こそが最大の売りの作家なので、短編だとその長所を手軽に堪能出来、こちらの方が好きという読者も多く存在しそう。ミステリ面では『イニシアル"M"の男』以外は作り込んだような仕掛けはなし。それでいて沢崎の調査の機転などは随所で見られ、事件内容もありきたりすぎないヒネリのあるものとなっており、各編五十頁ずつくらいという長さも収まりが良く、退屈は一切なく読み通せる。未成年絡みというコンセプト、というか縛りも成功の秘訣。少年少女にまったく同調しない沢崎の振る舞いも同時に楽しめて得をした気分になる。2023/06/13
ミカママ
310
読み友さんの好意でシリーズ読破ちう、のこれが3作目。驚いたことに短編集。依頼者が小学生の男の子である一作目は、ツカみからして、かなり好きな作品。。形式を踏みながらのいつもの沢崎節は健在。ファンとしては、もう少し多くの報酬を得ることに貪欲になってほしいものだ(笑)2017/11/24
修一朗
137
短編集だけれども全くもって沢崎はそのままだ。少年からの依頼だろうが娘の父親からの間違い電話だろうがスタイルは変わりなく,「タフでなければ…,優しくなければ…」のマーロウスタイルだ。頑固でやせ我慢で減らず口。6篇あってどれもよかった。一貫していい人が珍しく登場した「選ばれる男」がお気に入り。お気に入り順;①選ばれる男,②少年の見た男,③子供を失った男,④イニシャルMの男,⑤240号室の男,⑥歩道橋の男2024/05/13
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
130
久しぶりに読んだ沢崎探偵シリーズ。今回は6編+沢崎が私立探偵になった理由が語られる文庫本書き下ろしからなる短編集。淡々とした語り口はまさにザ・ハードボイルドという感じ。どれも数十ページの短い作品ばかりだが、無駄が無く中身は濃い。冒頭のほんの短いシーンで「沢崎」というキャラクターをきちんと描写しているのはさすがだ。それにしても、作家生活30年で僅か6作品。寡作家であるのはわかるが、面白いんだからもうちょっと書いてくれてもいいのに…。★★★+2018/10/08
papako
91
探偵沢崎シリーズ短編集。短編なのに濃厚だなぁ。もちろん慣れてきたので『このまま終わるわけがない』と読んでいるので、お腹いっぱいになりました。そしてタイトルに天使たちとあるように、子供(10代未満)が関わる。とても天使じゃない子供もいるけどね。『歩道橋の男』皆、伏見夫人を見損ないすぎ。沢崎の対応が良かった。『選ばれる男』草薙市議候補、かっこよすぎ!もう少しシンプルでもいいんじゃない?と思いながら、これが沢崎シリーズなんだな。と確認。2018/03/22