内容説明
人生に倦み、最高の刺激を求めていたジョン・ニューハウスは、塵に覆われた異星の海に棲む“塵クジラ”から採取される麻薬“フレア”を探す旅に出た。コックとして乗りこんだ塵クジラ漁船で、翼を持ち、優雅に空を翔ける異星人女性ダルーサと出会ったジョン。漁船で厳しい生活をともにするうちに、激しく惹かれ合っていくふたりだったが…。若き日のスターリングが華麗に描き上げた、ロマンティックな冒険ファンタジイ。
著者等紹介
小川隆[オガワタカシ]
1951年生、1975年早稲田大学文学部卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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ニミッツクラス
28
04年(平成16年)の税抜660円の文庫初版。サイバーパンクの著者による若き日(77年)のデビュー作。忘れた頃にFTレーベルで刊行された本書は海洋ファンタシイ。決して若書きの印象はないが、現在の著者からは想像できない内容で、翻訳権も著者からとめられていた由。原題は“Involution Ocean”で、海洋の在り方や人間関係からして如何様にも解釈できる。卵生の塵クジラから採れる覚醒剤が違法となる。主人公ジョンは捕鯨船にコックとして乗り組み、厨房で密造精製する。巨大クレーターの砂の海での海洋譚。★★★★☆☆2023/09/14
Small World
10
どこか異質で妙な世界観、そして、猥雑な登場人物たちの冒険は、むかーし昔のSFマンガ「コブラ」を思い出させます。w ドラッグ嗜好の主人公のグロテスクなラブシーンはなかなかでしたが、顛末は悲しかったです。2015/03/01
Mark.jr
7
Willam Gibsonと並ぶサイバーパンクSFの代表格であるBruce Sterlingですが。デビュー作である本書は、Roger Zelaznyを思わせる、異形かつ綺羅びやかなイメージが飛び交うファンタジー系のSFです。おそらく、著者の作品の中では異色作でしょうが、最も素直に楽しむことのできる一冊かもしれません。2025/10/29
酔花
7
スターリングの短編は結構読んできたけど、長編はこれが初めて。いいのかこれで。塵が漂う巨大クレーターを舞台にしたファンタジーであるが、ガジェットの使い方は後年のSFに通ずるものがある。魅力的なアイデアは次々登場するが、いまいち生かし切れていない点が処女作らしい。終盤に主人公に流れ込む塵世界誕生のイマジネーションは非常にわくわくしたのだけど、物語に溶け込んでいないのが勿体ないなあ。2015/05/04
hit4papa
7
水のない惑星を舞台にした冒険ファンタジーです。サイバーパンクの旗手のデビュー作がファンタジーとは驚きですが、作品そのものは習作というところでしょうか。ムーブメントの勃興前夜という時間軸でみると、感慨深いですね。




