出版社内容情報
由緒ある静かな街ゲイルズバーグ。この街に近代化の波が押し寄せる時、奇妙な事件が起こる……表題作他、現代人の青年とヴィクトリア朝時代の乙女とのラヴ・ロマンスを綴る「愛の手紙」など、甘く、せつなく、ホロ苦い物語の数々をファンタジイ界の第一人者がノスタルジックな旋律にのせて贈る魅惑の幻想世界。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
136
秀逸なのは最後に収録された『愛の手紙』。時空を超えた恋愛ものはたくさんあります。『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン)、『ライオンハート』(恩田陸)、『たんぽぽ娘』(ロバート・F・ヤング)、『ジェニイの肖像』(ロバート・ネイサン)、『美亜に贈る真珠』(梶尾真治)、『緑のベルベットの外套を買った日』(ミルドレッド・クリンガーマン)、『満月』(原田康子)、『君の名残を』(朝倉卓弥)などなど。しかし、決して出逢うことのない設定という面で『愛の手紙』は独創的であり、それだけに純化された想いが際立つ。名作です。2018/05/08
星落秋風五丈原
78
すごく優しいSFですね。古き良きものを愛する幽霊篇「ゲイルズバーグの春を愛す」「クルーエット夫妻の家 」恋も一種のマジックだから「悪の魔力」「おい、こっちをむけ! 」で、チャーリーって本当は誰?「もう一人の大統領候補 」しみじみとしました「独房ファンタジア」「時に境界なし 」冒険を楽しんだ奥様と夫「大胆不敵な気球乗り」ある条件を満たした時パラレルワールドに行ける「コイン・コレクション」 映画『いつかどこかで』みたいな「愛の手紙 」表紙絵は内田善美さん。2022/12/15
のんき
77
ファンタジーで、ノスタルジーな短編。古き良き時代のアメリカはこんな感じだったのかなあと思いました。気球のお話しも良かったな。空から見た景色は美しいだろうなあ。「愛の手紙」も好き。時代を超えたロマンス。ラブレターの内容も引き込まれました。時間に境界はなく、愛は時代を、時間を超えるものだと思いました。こんな手紙を交換できたら素敵だな2017/10/20
ユメ
75
クラフト・エヴィング商會がおすすめ本をセレクトしたフェアで出会った本。少し不思議なお話を集めた短篇集。中には時空が歪むような物語もあるが、タイムトラベルと言うほど大仰なものではなく、ボタンを一つ掛け違えたように、ごく自然に違う時代に紛れ込む。読者を待つのは冒険譚ではなく、〈古き良き時代〉への強い執着ーそれも著者自身のーなのだ。表題作の、歴史ある街の景観が破壊されゆくのを、街自身の過去が意思を持って止めようとするという設定に惹かれた。近代化を止めることは最早現在の人間にはできないというのが、一層郷愁を誘う。2015/02/24
かりさ
70
時を超えジャンルさえ超えた古きを美しく映し、過去は現在よりも遥かに強く揺るぎない…フィニイの愛溢れる短篇集。表題作「ゲイルズバーグの春を愛す」の意表を突いた街の不思議な力、「愛の手紙」は切ない時の手紙。ゲイルズバーグと聞くと胸にあたたかく優しく迫るものを感じるまでにフィニイの時のファンタジーに酔いました。読み終えてひときわ美しく愛を奏でるかのような、内田善美さんの装丁画がとても素敵。眺めるたびに胸がぎゅっと切なくなります。フィニイの短篇作品どれも面白くこの作品を読んだ日々は忘れられない時の旅になりました。2020/05/07
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