出版社内容情報
韓国の巨大企業が建設中の軌道エレベータに隠された世界を揺るがす機密を巡り、高軌道で微重力下戦闘を繰り広げるアクションSF
内容説明
東南アジアの島国パトゥサンは、韓国の巨大企業LKグループが建設した軌道エレベーターの利益によって繁栄を極めると同時に、貧しい先住民の不満が深刻化していた。LKスペース社で汚れ仕事を担うマックは、自分の隠し資産を盗んでいた社員チェ・ガンウの身辺を調査する。それは、軌道エレベーター建設当時の悲惨な事件をめぐる、四つ巴の情報戦の始まりだった…韓国SFを長年牽引する実力派作家のアクションSF!
著者等紹介
デュナ[デュナ]
1994年からハイテル科学小説同好会で短篇を発表し、キャリアをスタートさせた。その後、各種メディアに小説と映画評論を書きながら旺盛な活動を続けている
吉良佳奈江[キラカナエ]
1971年生、東京外国語大学日本語学科、朝鮮語学科卒、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
120
軌道エレベーターというSFの大道具を核とするが、物語は施設を運営する韓国企業内部での派閥抗争や情報戦が軸となる。記憶の移植やバイオポットなどSF的設定も、愛憎劇や政治ドラマを支える小道具の役割しかない。著者まえがきにある通り「現実的な制作費のSF映画」の原作にとどまっており、韓ドラファンならともかくハードSFを期待して読めば失望する。ただ会社の汚れ仕事を処理してきたゲイの男を語り手とし、その孤独で冷めた視点がハードボイルド調の凄みをたたえる。これでエレベーター崩壊くらいの大ドラマを展開したら面白かったが。2025/04/20
こら
46
SF読むの久しぶりだったので、肩慣らしにと200ページちょいなので手に取ったけど面白かった!巨大財閥が軌道エレベーターを建設し、政治経済をも支配する島国パトゥサン。企業側の雇われトラブルシューターの主人公は些細な切っ掛けから、様々な勢力が交錯する事件に巻き込まれる。舞台が如何にも一筋縄ではいかないヤツらばかりが跋扈する東南アジアの小国というのが自分好みで刺さった。スケールのデカいアイデアは無いけど、様々なサイバーパンクガジェットを駆使した情報ドンパチ諜報戦はやっぱワクワク!韓国SFもどんどん出して欲しい!2025/02/23
本の蟲
12
軌道エレベーター建設企業が舞台の韓国SF。今まで読んだ韓国SFは「少し不思議」テイストだったので、初の本格宇宙SFを期待したが、少々当てが外れる。巨大企業内の派閥争い、経営親族の跡目争いと愛憎、建設地である島の住民とのもめ事とスキャンダル等、あとがきでも触れられるが、実に「韓国ドラマ」っぽい内容。〈ワーム〉を利用した記憶移植やドローン他、未来ガジェットはいくつも登場し、軌道エレベーターからその先へ。宇宙進出へのビジョンも一応背景としては語られる。しかし、やはり企業小説であり、読みたかったSFではなかった2025/04/07
イツキ
9
軌道エレベーターをめぐる巨大企業内の情報戦を描くSF。200ページほどと綺麗にまとまっているため読みやすく面白いです。そんな中でも突然の利権により振り回される周辺地域のゴタゴタやそこに住む人間を軽く見て企業のトップ層などがリアルに描かれておりアクションシーンや陰謀なども読み応えがある作品でした。2025/02/05
えんじ
7
軌道エレベータ(宇宙エレベーター表記は使われなかったと思う)ものなので、手に取った次第。ここ1年に読んだ本の中で一番きつかった。薄いのだが、改行なしにほぼずっと埋め尽くす文字。同じような名前でかつ覚えにくい登場人物。しかも何も喋らないこともしばしば。過剰でくどくどと続く説明文。一人称視点のはずがときどきズレる表現。しかもテクノロジーレベルが揃っていないため、展開が予測しづらい。予測しづらいのに表現がくどいので、語られていることが理解しづらく何が起きているのだかわからない。それでいて、シーンの描写が続く。2025/04/24