出版社内容情報
三百万の軍隊を用いた驚異の人間計算機により十万桁まで円周率を求めようとする「円」など全13篇を収録した短篇集、待望の文庫化
内容説明
円周率の中に不老不死の秘密がある―10万桁まで円周率を求めようという秦の始皇帝の命を受け、荊軻は300万の兵による人列計算機を起動した!『三体』の抜粋改作「円」。貧村で子どもたちの教育に人生を捧げてきた教師の“最後の授業”が驚愕の結果をもたらす「郷村教師」。漢詩に魅せられた異星種属が李白を超えるべく壮大なプロジェクトを立ち上げる「詩雲」など、中国SF界の至宝・劉慈欣の精髄13篇を収録した短篇集。
著者等紹介
劉慈欣[リュウジキン]
1963年、北京生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。『三体』が、2006年から中国のSF雑誌“科幻世界”に連載され、2008年に単行本として刊行されると、人気が爆発。中国のみならず世界的にも評価され、2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が刊行された。2015年、翻訳書として、またアジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
67
※テクノロジーでは探知されない鯨を捕鯨が葬る※研究者の驕り、技術者の矜持、労働者の奉仕は何れも人間の弱点を内包す※教育と無理解の差に衰退を嘆く※なにげに平行世界※物理学者の憂慮※侵略戦争の不条理を描く筆に資本主義の腐敗を匂わせるが共産圏に於ても…※芸術はそれ自体では芸術足り得ず、それを芸術と認識することで芸術と成る※『サソリとカエルの寓話』※くだらないことが成果となる?否!テクノロジーは発想に依って用途が飛躍す※しかし二百年は永遠には程遠い※何れも長期的展望の欠如!※私達は人生に怯えているか?※迂遠な暗殺2023/05/13
Sam
58
「三体」は未読。予備知識なしで何となく手にしたのだが、読み始めたら止まらない。何とも素晴らしい短編集だった。もちろんSFではあるんだけど家族の絆や環境問題、貧富の差といった極めて現代的なテーマが巧みに取り上げられているかと思えば「そうくるか!」という意外な着想に驚かされる。そしてなんといっても宇宙の大きさを感じさせてくれるようなスケールの大きさなストーリー展開は出色。すごい作家であることがよーくわかった。2024/03/25
まちゃ
57
1999年から2014年に発表された13篇を収録。《三体》にとり入れられたモチーフの原型(SF要素、中国の文化的背景)を垣間見ることが出来る興味深い短編集でした。楽しめました。《三体》にも登場した「円」の人列計算機のスケールは圧倒的2024/02/20
はるを
57
🌟🌟🌟🌟☆。『三体』でお馴染み天才作家劉慈欣、初の短編集。文庫化のタイミングで選書。短編とは言っても一本一本がとても丁寧な設定で1ページ辺りの情報量がずっしり重い。映画が作れそうな完成度。全体的にバッドエンドで終わる話が多く「悲壮感や絶望感が漂う暗さの中に垣間見えるひとすじの光明」という言葉が浮かび上がるような内容。『円』は以前にも読んだ事があったが再読してもやっぱり良い。全部読み応えがあって良かったが中でも『栄光と夢』は今年読んだ小説の中ではベスト3に入るほどの文句なしの傑作。2023/07/14
masa
48
21世紀にもなってまだ人間同士が武器を使って直接的に殺し合う戦争というシステムの古臭さへの苛立ちをずっと感じている。せめて血を流さない戦いへアップデートできないのだろうかと、何度も考えたことがある。きっとワールドカップのようなスポーツの祭典に、その可能性があることを感じてる人は多いはずだ。脱炭素にまつわるような経済的な競争にも、そういった可能性はあるように思う。人は恐らく本能的には血を流さない戦争を模索している。だから真の脅威は目先の敵ではなく、僕らがシステムによって殺し合いをさせられてしまうことなのだ。2023/12/23