出版社内容情報
悪い記憶を切除する異星の訪問者にまつわる事件を描く表題作など第三短篇集『生まれ変わり』単行本版から12篇を収録した傑作集
内容説明
異星からの訪問者トウニン人と共生することになった人類は、悪い記憶を切除し新しい自分に「生まれ変わる」ことが可能になった。トウニン人の恋人をもつ地球人の特別捜査官が謎の殺害テロ事件を追う表題作、アジアの田舎の靴工場で女工として働く少女の不思議な体験を描く「ランニング・シューズ」など、現代アメリカSFの最重要作家のひとり、ケン・リュウの単行本第三短篇集『生まれ変わり』から12篇を収録した傑作集。
著者等紹介
ケンリュウ[ケンリュウ]
1976年、中華人民共和国甘粛省生まれ。弁護士、プログラマーとしての顔も持つ。2002年、短篇「カルタゴの薔薇」でデビュー。2011年に発表した短篇「紙の動物園」で、ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝く。その後も精力的に短篇を発表するかたわら、中国SFの翻訳も積極的におこなっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
73
12の短編集。世界中でずっと続いてきた差別や暴力、これから深刻化するであろう温暖化による地球の破壊。人々がかかえる痛みとわずかな希望が、SFの形をとって描かれています。これまでの作品と同様、アジアからの移民としての複雑な立場や悲しみが全体をおおっています。おもしろい発想や手法だと感心し考えさせられる作品ですが、難しくてほとんど理解できない部分もありました。なので、半分はつらい読書でした。ケン・リュウの作品6冊目。読むたびにはじめの頃の「好きな世界」から離れて行くような気がします。2021/09/28
ざるこ
37
12篇。「生まれ変わり」悪い記憶を切除でき忘れたまま生き直すというのは幸せそうだけど。でも痛みを知らないと生きる上でメリハリがないのかも。トウニン人の思考が調子よすぎに感じてくる。忘れたいほどの苦しみなのに。「訪問者」宇宙のどこかから大量の探査機らしき物体が。人間とは一定の距離を取り攻撃するでもなく観察してる模様。結局目的も何も不明のままだけど宇宙には地球を見ている存在があると植え付けられる感覚がよい。全体的に何処か遠いとこに放り込まれた読み心地。「数えられるもの」に至っては数学習ってるみたいでお手上げ。2023/03/17
bianca
25
表題作の「生まれ変わり」は自分の犯した罪を自身から切り取ることが出来る世界。その後、善人として生きていくことができるか。また人はそれを許せるのか。元来人間は忘れることが得意だが、忘れることができない強烈な闇は抱えて生きていくべきなのか否か。現実社会が抱える課題とSFのミックスで、他の作品も考えさせられるものばかり。軽めの「化学調味料ゴーレム」はユダヤ教の神とレベッカのネズミ退治。各々の解釈や、やりとりが漫才みたいで面白い。ケン・リュウ作品はいつも何か発見があるのがいい。2022/01/26
ひさか
20
2019年2月新☆ハヤカワ・SFシリーズ刊の生まれ変わりを2分冊した1冊目として、2021年1月ハヤカワSF文庫刊。地球上での新種人類とのファーストコンタクトを描いたホモ・フローレシエンシスが秀逸。神様が登場する科学調味料ゴーレムが面白い。神様の正体が実は○○だった的なオチを予想していました。介護士のローテクアイデアが、楽しめました。他、難しいめなSFが多かったです。2021/02/28
おはち
18
これまでの短編集は各巻ごとにうっすらと共通するテーマが見えていたが、本巻はかなりバラエティ豊か。とびきりユーモラスな「化学調味料ゴーレム」からゴリゴリ数学な「数えられるもの」、移民問題やファーストコンタクトものなど一気に読むと少し混乱します。表題作は平野啓一郎の分人主義を技術的にコントロールできたら、という視点で面白かったです。2021/06/06