出版社内容情報
リュウ、トライアス、ワッツ……。2010年代に発表された煌めく星ぼしのごとき海外SF作品を精選した、充実の年代別アンソロジー
内容説明
“不在”の生物を論じたミエヴィルの奇想天外なホラ話「“ザ・”」、映像化も話題のケン・リュウによる歴史×スチームパンク「良い狩りを」、グーグル社員を殴った男の肉体に起きていた変化を描くワッツ「内臓感覚」、仮想空間のAI生物育成を通して未来を描き出すチャンのヒューゴー賞受賞中篇「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」…2010年代に発表された、珠玉のSF11篇を精選したオリジナル・アンソロジー。
著者等紹介
橋本輝幸[ハシモトテルユキ]
1984年生、早稲田大学第一文学部卒、SF書評家・研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
COSMOS本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
28
2020年12月ハヤカワSF文庫刊。11編のSFアンソロジー。6編は初訳で、始めて読む面白い話が多く、とてもお買い得。2010年代という認識はできなかったが、こういう作品のあった時代だというのは、体感できた。テッド・チャンのソフトウェア・オブジェクトのライフサイクルはアンソロジーのほぼ半分を占める中編で、人の機械知性達への叙情的な想いが気高く、読み応えがあり、楽しめました。そういえば、テッド・チャンのあなたの人生の物語を原作とした映画のメッセージも2010年代を代表するSF映画です(ちょい話がズレた?)。2021/02/28
いちろく
26
編者の選定による10年代海外SF作品のアンソロジー。SFを中心に読んでいない私でも知っていたり他の作品を既読な著者が少なくない点で、手に取りやすい内容だった。中華系のSF作品がこれまで以上に注目を集め翻訳されたのも、10年代SFの特徴の一つと改めて感じた。取り扱うジャンルに関しても、多様なのにどこか似ている感じがした所も、選者の妙かと。2021/02/26
かとめくん
22
SFとしては機械知性ネタは昔からあったが、現実にAIが具体化した現代を起点に想像力で補っていくと、今まで描かれていたのとまったく違う世界が現れるのだということをまとめたアンソロジーと言えるのではないかな。アンソロジーとしては最後の一篇が長いので印象を持っていかれすぎて、ほかの短編の印象を薄めたところがあった。各編とも個性的で多様性を取り込んだ作りだったが、SFとしての面白さの視点で見ると物足りなさも感じた。自分的には「ロボットと…」「良い狩りを」あたりが好み。2025/02/26
宇宙猫
22
★★★ 火炎病/ピーター・トライアス 3既 乾坤と亜力/郝景芳 3 ロボットとカラスがイーストセントルイスを救った話/アナリー・ニューイッツ 5 内臓感覚/ピーター・ワッツ 3 プログラム可能物質の時代における飢餓の未来/サム・J・ミラー 1既 OPEN/チャールズ・ユウ 3 良い狩りを/ケン・リュウ 3既 果てしない別れ/陳楸帆 4 “ "/チャイナ・ミエヴィル 3 ジャガンナート―世界の主/カリン・ティドベック 3 ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル/テッド・チャン2022/11/07
シタン
20
AIと子供、AIと動物などほっこりした作品が多い序盤を抜けると、ピーター・ワッツ「内臓感覚」で一気にダークサイドに堕ち、そこからホラー、幻想、スチームパンク、異生物、架空論文と広大なSF世界を見せてくれた後に、再びAIに戻りテッド・チャンで締める。意図的なのかはわからないが、テーマが似ている作品も多く、この一冊の中だけでも読み比べが楽しめる。SFはその性質上、空間的・時間的広がりを持つが、各時代の世界の様々な書き手の作品を読むことで、そこにまた別次元の広がりが加わる。2020年代は更なる多様化を期待する。2020/12/23