出版社内容情報
22世紀、アメリカは小型ロボットが監視する管理社会と化していた。青年社長アレンは衝動に駆られて「いたずら」に及んでしまう!?
フィリップ・K・ディック[ディック フィリップ ケイ]
著・文・その他
大森 望[オオモリ ノゾミ]
翻訳
内容説明
2114年、ストレイター大佐による道徳再生運動の結果、世界は小型ロボットに監視される管理社会となっていた。アレン・パーセルは調査代理店の経営者として成功を収めていたが、突然の衝動に駆られて大佐の銅像に「いたずら」してしまう。像の頭を切り取り、手に乗せて蹴ろうとする姿にしてしまったのだ。この事件を機に、アレンは管理社会から落伍していく…。ディストピア社会を戯画化した初期長篇。
著者等紹介
大森望[オオモリノゾミ]
1961年生、京都大学文学部卒、翻訳家・書評家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
催涙雨
64
この作品より前に書かれた二作と同様に最初期の長編でありながら以後の作品と共通するモチーフがいくつか登場する。黒髪の小娘はもちろん頻繁に登場するものであるし、かつての遺物のやり取り(クラシックや主流文学を好んでいたディックらしくものによっては若干ペダンチックでもある。本作ではユリシーズ)は「高い城の男」などにも共通する。またリゾートのアザーワールドでの現象は彼のテーマの萌芽を感じさせる非常に象徴的なものである。これが長編のなかで本格的に花開くのは「宇宙の眼」のことだが、54年以前の一部の短編で書かれていたオ2019/01/24
阿部義彦
30
はい、早川書房さん有難う、黒のカッコイイ表紙で新訳によるディックです。道徳に厳しくなった未来を舞台にその中でもがき苦しみ、この世の転覆させようと一芝居をうって何とか一泡吹かせるのが大筋かな。まあ傑作では無いですが、ユーモアに溢れてなんだかんだ言っても最後まで読ませられて仕舞いました。そして、割と責任を引き受けて逃げないで何とかなるさ!とかいう明るい結末なのが読後感良いですね。この相互監視のタレコミと裁判懺悔制度の息苦しい世の中今の世相に似ています。ヤンチャな明るいディックも良かったよ!2018/10/21
em
22
道徳再生運動、集団相互監視システム、精査された道徳的教訓を含む”パケット”を流すテレメディア、メンタル・ヘルス・リゾート、廃墟となった北海道。数十年前に書かれたディストピアの中に、いつも現在を重ねようとしてしまうのはなぜだろう。発表当時、読者はここに何を見ていたのだろうか。きっといま書かれているSFの中にも、数十年後に”現代を予言した”と言われるものが紛れているに違いない、そう思って探したくなる。2018/09/24
hikarunoir
15
初期ディストピアSF。ほんの出来心のいたずらも許容しない、潔癖な社会と堕落した社会。どっちも極端。若き作者の気概の反映か主人公にガッツあり。2024/02/19
kurupira
12
まず驚くのが1956年の作品であること、監視社会やメディア統制の世界を予見しており、ドローンと監視装置の小型化で今後あり得る世界。現在はSNSなどで個人が情報発信する自由な世の中とも感じたが、逆に重要な政府やメディアの情報を鵜呑みにできないなあと、ぼんやり考えさせられた。カバー絵にあるストレイター大佐の銅像首イメージは、50年前オリジナル版もいけてる!wikiで原題 the man who japed で見ると、ちょっと笑える、wiki一番下リンクには各国版のカバー絵も見れるPKDまとめページもなかなか。2018/09/29