内容説明
2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには…ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨篇。
著者等紹介
矢野徹[ヤノテツ]
1923年生、2004年没、作家、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
227
いかにもハイラインらしい作品。いわゆる反骨精神旺盛でアメリカン・スピリッツに溢れる作品ではないだろうか?月移住民と地球政府との星間戦争を描いている。地球は宇宙艦隊を月に派遣し、月はカタパルトで地球にゴミ屑を投下して対抗する。この物語の面白さは、ナンセンスなアメリカン・ジョークともいえる破天荒な箇所であるが、“SF”として、2つの星間における物資のやり取りに不均衡が発生すると(本物語の場合、月の質量が減少)、互いの引力・斥力にズレが生じて周回軌道が保てなくなるというコアな設定をしているところが興味深かった。2016/04/29
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
112
罪人の流刑地だった月世界は、新世代が生まれても地球の植民地として搾取され続けていた。自由と人間らしい生活を求めて、3人の月世界人と一基のコンピュータは独立のための闘いを開始する。兵器はおろか、宇宙船の一隻すら持っていない彼らは、綿密な計画を立て月の住民たちの心を一つにしていく。主人公マニーとの交流で《人格》を形成していくコンピュータ「マイク」が実に魅力的。『2001年宇宙の旅』の「HAL」を思い浮かべたが、ずっと知的でユーモアのセンスも持っている。初出は1965年! 60年代のSFはキラ星のようだ。2015/09/29
at-sushi@進め進め魂ごと
88
まず、本作の小骨を外し、軽く湯がいてアクを取ります。次に予めブツ切りにしておいた「宇宙の戦士」と合わせ、醤油と酒で15分中火で煮込み、仕上げに赤い彗星を加えます。出来たものがこちら「機動戦士ガンダム」です♪っつーぐらい影響力凄いw 「神は細部に宿る」というが、家系婚や革命細胞の構築、意思を持ったコンピューター・マイクとサブ機(馬鹿息子)のデータリンク等、ディテールの細やかさこそハインラインの真骨頂な気がする。面白かった。2018/09/22
さゆ
77
地球が、流刑地となった月から資源を搾取しており、AIと共に革命する話。無料の昼飯はない!というテーマ通り月では空気だって有料。私たちの現実も何だって有限であり、考えて使わなきゃいけない。この本から、地球をいかに長く利用するかという視点で作ったという富野由悠季のガンダムは、先見があったんだなぁと思う。2023/12/02
とも
74
再読。 月に石をぶつけるワンアイデアストーリーだったかなあと思ってたら全然違った。むしろそれを最終ラインとして、内外に政治的な駆け引きを行うのがメインだった。 とにかく話の密度がすごい。おそらく普通の本なら数冊書けるくらいのアイデアを投入していると思う。 矢野徹さんの訳は良くも悪くもクセがある。そろそろ新訳も読んでみたい。2023/06/05