内容説明
故人となった父母や姉など身近だった人びとの思い出をとおして、悩み多かった家庭生活の秘密を打ち明け、また同時代の作家たちのこと、さらには銃砲所持や民族社会、モザンビーグの内戦、地球汚染などの社会的、世界的な問題にいたるさまざまなテーマを、アメリカ文学界の奇才ヴォネガットが、ユーモラスかつ真摯に語るエッセイ集第3弾。スピーチとエッセイと追憶の数々を見事に組み合わせた1980年代の自伝的コラージュ。
著者等紹介
浅倉久志[アサクラヒサシ]
1930年生、1950年大阪外国語大学卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chanvesa
24
「オポッサムの妊娠期間は十二日。インド象の妊娠期間は二十二ヵ月です。わが友人と隣人のみなさん、アメリカの自由の妊娠期間は、なんと二百年あまりにおよぶことがやっと判明したのです!(126頁)」だからあきらめてはいけないと。そうかもしれないがなんと相対的な言い回しか。「ハンブルクは再三にわたって爆撃されるべきだったか?イエス。広島は爆撃されるべきだったか?あれがなければ死んでいただろう人びとにたずねてほしい。(158頁)」これが彼の思考の限界に思えてならない。戦争に対し普遍の「否」を突きつけられないアメリカ。2023/09/03
マウリツィウス
23
ヴォネガットの科学探究領域は《運命》つまり必然を避けられない世界像をシェイクスピア/ギリシャ悲劇意味から脱却、その近代性が成遂げた反・不条理を打ち立てた意味で古典主義的だ。SF時代の先駆における機能と使命とはその確立価値観の提供でありギリシャ時代を忘却する現代へ《テクスト》概念の重要性を説いた。この系譜と源泉を理解した作家は意義難解かつ解読を拒んだ《ポストモダニズム幻想》を消滅させていくプロセス論を提唱、本作での試験遂行はコンテクストを喪失した現代文明への直接批判を兼ねる。古典/回帰/刷新を同時意味した。2013/06/30
roughfractus02
11
一般の人に除け者にされ、孤独と絶望を母に自由を獲得するのが創造的な人であると著者はいう。E・ヴィーゼルは「鬱病でなければ純文学作家にはなれない」と言い、無意識を描くJ・ポロックは作品の中の自分は意識がないと言った。ではなぜ彼らが創造的なのか?彼らを除け者にする一般の人が中毒患者であると指摘する役割が必要だからだ。酒、ギャンブル、コカイン、買い物、大食等々の中毒の中で一番中毒になるのは戦争だ。10年ごと編まれる作者の3冊目のエッセイ集である本書は、創造と破壊に思いを巡らす80年代に書かれた(1991刊)。2023/07/05
ceskepivo
8
著者はドレスデン無差別爆撃を経験。ドレスデンへの無差別爆撃は行われるべきではなかったとしつつも、広島への原爆投下については、「あれがなければ死んでいたであろう人々に尋ねてほしい」と言っている部分は、理解できなかった。読むのに難渋した。2025/01/04
naoco
7
戦争に参加したことをきっかけに壊れていった精神が、ジョークの中にも繊細に見え隠れしていて、私の中では反戦エッセイとして最もと言っていいほどの印象深いものになりました。2016/03/15
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