内容説明
銀河帝国首相の座をめぐり、首相候補のハリ・セルダンに対する暗殺工作が激化するなか、帝国は深刻な事態に直面していた。辺境惑星サークで発掘された二体の模造人格がきっかけで発生した労働用機械の叛乱が拡大し、あらゆる生産活動が停止するに至ったのだ。帝国の基盤をゆるがし、崩壊を加速するこの危機にセルダンが示した対策は…心理歴史学の構築をめざすセルダンの逡巡と決意を描く『新・銀河帝国興亡史』第一弾。
著者等紹介
ベンフォード,グレゴリィ[ベンフォード,グレゴリィ][Benford,Gregory]
1941年アメリカ生まれ。少年のころからSFファンとして活動をはじめる。カリフォルニア大学天体物理学教授。1974年に発表したゴードン・エクランドとの合作「もし星が神ならば」でネビュラ賞を受賞、また1980年の『タイムスケープ』でもネビュラ賞を受賞している。1977年の『夜の大海の中で』から、1995年の『輝く永遠の航海』につづく壮大な宇宙叙事詩『銀河の中心』シリーズなど、精力的に作品を発表し、現代SFを代表する作家の一人と評されている
矢口悟[ヤグチサトル]
1968年生、1994年東京外国語大学ロシヤ語学科卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
16
ファウンデーションという、故アシモフ翁が長年かかってあちこちつじつまを合わせながら作り上げた長大なシリーズの隙間の、「書かれなかった歴史」を新たに書き起こすシリーズ、序盤の下巻です。ヴォルテールとジャンヌ・ダルクの仮想人格が討論するという場面は、二人が抱き合ってセックスするというおマヌケな展開になりますが、それは本筋に余り関係ありません。そもそもこれは、まだ構想さえされていないファウンデーションの危機ではなく、銀河帝国が危機にあるらしいことを、セルダンが心理歴史学で察知するというお話です。2022/03/27
roughfractus02
4
本シリーズにサイバーパンクが侵入したかに見える本作は、心理歴史学の人類のみが知性を有するという前提に切り込む。惑星サークの労働用機械の反乱を誘発するサイバースペースの「模造人格」も犬やチンパンジー等動物の「知性化」実験も、心理歴史学の「人類」中心主義の根本からの危機を表す。様々な知性体が登場する本書が本シリーズに向けるのは、銀河帝国を含む銀河系になぜ人類以外の知性がいないのか?という問いだ。この問いは異星人に馴染むSF読者自らを、自ら住まう宇宙とコンピュータが普及した身近世界にアクセスする(1997刊)。2018/12/03
サスケ
4
★★★★★ パニュコピアのエピソードは映画アバターを彷彿とさせる。パンはチンパンジーなのだろう、話を読み進めながら想像上のチンパンジーの群れの様子とイメージが重なり合った。 そういえば、パニュコピアでドースが侵接できるのには驚いた。これは脅威的な模倣レベル。 電脳空間における太古からの存在とハルとの駆け引きが後日譚としてのみ語られているのがおしい。ぜひ、その時の様子を読みたいもの。2017/06/01
山像
3
読んでいて相当疲れる小説ではあった……なにせシミュレーション人格のヴォルテールとジャンヌ・ダルクが主役を務めるベンフォード節前回のパートとハリ・セルダン視点の「銀河帝国興亡史」の正当な続編パートがどこで繋がるのかさっぱり読めないまま延々並行展開する。とはいえ最終的には読み進めた甲斐のある、中々の地点にまで辿り着いた。これくらいラディカルな再構築をしなければ続編なんて面白くなる筈がない……。さて2巻はグレッグ・ベアだ。2013/12/17
ALBA
2
正直言って何度読むのをやめようかと思った事か…最後は意地になって読み切った、読み切ってやった。サイバーパンク風の展開に回りくどい言い回しで何にも頭に入って来ない事しばしば。ファウンデーションシリーズではなく全く別の作品としてならまだ納得いくんだがなぁ。とはいえこれは3部作の第1部なので本書だけで評価するのは時期尚早。一応第2部に進みますが、3部作を今年中に読み終わるのは無理かも…2013/12/17