内容説明
1693年、栄耀栄華をきわめる太陽王ルイ14世の住むヴェルサイユ宮殿に、伝説の怪物である海の妖獣が運びこまれた。捕まえたのは、イエズス会士で自然哲学者のイヴ・ドラクロワ。国王の命をうけ、遠洋へ探検の旅に出て、雌の海の妖獣を生け捕りにしてきたのだ。妖獣は宮殿の庭にあるアポロンの泉水の檻に入れられ、その世話を宮殿で侍女をつとめるイヴの妹、マリー=ジョゼフがすることになったのだが…ネビュラ賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
9
この本は、日本のSFファンによる評価はからいですね。SFじゃないだろ、歴史改編でもないだろ、面白くない、などなど。同感です。SFと見て読み始めては違和感があるでしょうね。せめて歴史SFと呼んではどうだろう、これ。 ざっとネット上の書評を見てみたけど、中世がいつだかもわからない人や、ルイ14世がなんだかわからない人だと、この本は「妙なファンタジー」以上の読み方はできないかもしれません。しかし、デュマがSFを書いたら、こんな感じになるんじゃないだろうか。歴史好きにはたまらんSFじゃないでしょうか、この本。2009/06/06
momonnga
7
主人公マリー・ジョゼフは科学や数学に興味がある一風変わった女性。彼女の兄で神父のイヴがルイ14世の命令で「海の妖獣」を捕えヴェルサイユ宮殿に持ち帰ったのが話の始まり。ルイ14世時代の豪華絢爛なヴェルサイユ宮殿ファンタジー。訳が優雅な文章で読みやすかった。海の妖獣はいわゆる人魚で美しい歌声でマリーと意思疎通する。しかし外見は人間から見るととても醜い。醜い海の妖獣は果たして人間と同等に扱われるだろうか?海から拉致され勝手に見世物にされ食べられそうになる。この小説は人間のエゴというものを浮き彫りにしていると思う2020/06/16
綾乃
6
たまたま図書館で目に入って借りてみた作品。レビュー的にはなかなかキビシイ物が多いですが、個人的には楽しく読んでおります。ルイ14世時代のきらびやかなベルサイユでのセイレーン的妖獣と主人公との交流、貴族の皆様の日々といったなかなか珍しいシチュエーションでのファンタージー作品。カテゴリー的にはSFってなっているようですが、SFよりは「ベルサイユファンタジー」なカンジがします。2019/03/21
ろびん
3
歴史改変ものらしいですが、そもそも17世紀のフランスの歴史に明るくないのであまり……。2019/01/30
バジルの葉っぱ
3
捕獲されてヴェルサイユ宮殿につれてこられた妖獣とは、半人半魚で、その美しい歌声で人を惑わすセイレーン(つまりスタバのロゴになっているあの2つの尾をもつ人魚のようなあれです)。ルイ14世の時代のヴェルサイユ宮殿での貴族たちの生活、習慣、カトリック教会と宮殿の関係、諸外国との関係などが良くわかりとてもおもしろい。主人公(マリー=ジョゼフ・ドラクロワ)は、当時珍しかったであろう、数学、物理、生物学等の知識をもち、かつ絵・音楽においても才能豊かな女性。下巻も楽しみ。2013/01/11