内容説明
遙か深宇宙で進化した生命体グレックス―エンギという名の幼仔が冒険を求めて行方をくらました時、群れは大騒ぎとなった。ただちに2体の斥候が選ばれ、その跡を追った。だが怖るべき捕食生物「大食らい」もまた、その仔を狙っていたのだ。やがて未熟なエンギは、とある恒星の磁力流に捕えられ、地球という名の惑星に…感動の表題作ほか、ネビュラ賞受賞作「ラセンウジバエ解決法」など、全10篇を収録した傑作短篇集。
感想・レビュー
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miri
44
ネビュラ賞を受賞した短編をはじめ、社会制度の枠に囚われた自身の偏見のようなものに阻まれ、非常に難解に感じた。感覚的に理解が及んだのは、『星ぼしの荒野から』、『たおやかな狂える手に』。どちらも異文化理解、心と感覚の共有はどこまで可能なのかが根底にあったように思う。後者ははるかな距離を越えたアメリカ版織姫と彦星のようなラブストーリー。「何もかも失ったところに、たった1つが手に入る」、こういった感性は東洋的なものではなかったのだという発見とたった1つを手に入れるまでの努力と犠牲に吐息を漏らしてしまった。2024/07/05
星落秋風五丈原
25
地球に観光旅行にやってきたエイリアンは、なぜか善人ばかりを集めて贈り物をしたいと言い張る。少年、看護師、博士、森林監視員らは皆口を揃えて「なら大統領に会えば?」というのにエイリアンは取り合わない。平和主義のエイリアンが善人達ばかりを連れて行った先とその目的は? いやぁ、エイリアンの方が一枚上でしたね、の「天国の門Angel Fix」。著者がCIA草創期のメンバーと聞くとキャロルの受けた仕打ちは体験談?と深読みしたくなる「たおやかな狂える手に With Delicate Mad Hands」2020/06/08
紫羊
19
最近お気に入りのYouTubeチャンネルで紹介されていたジェイムズ・ディプトリー・ジュニアの短編集。男性名で作品を発表していたが、のちに女性であることが明かされた。不思議な味わいの作品ばかりだが、そのすべてに共通するのは、踏みにじられる小さな命への哀惜。そしてフェミニズムの香りが漂う。彼女の他の作品も読んでみたい。2024/11/27
宇宙猫
19
★★★★★
kariya
13
再読。郷愁と喪失感、感情としては実にありふれているが、ティプトリー作品のほぼ大半に通底しているのは、永遠に辿り着けない/得られないものが対象だから少し話が違う。傑作も多いこの短編集で、挙げるとするなら「たおやかな狂える手に」。生まれつきの容貌から蔑まれてきたヒロインは、切望した星の世界での度重なる乗組員の虐待に狂い、同僚を殺害して船を奪う。幼い頃から励ましてくれた声の住む、”豚の帝国”を1人目指して。狂気と渇望の果ての、苦くはあるが美しい結末までも含めて、いつまでも胸に刻まれる全てにおいて驚くべきSF。2009/08/16
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