内容説明
久美子は、たったひとりで成田発ロンドン直行便にチェックインした。激化する経済抗争を避けるため、《ヤクザ》の大物である父親の指示でイギリスに身を隠すことになったのだ。だが久美子は知るよしもなかった―13歳の自分が、ミラーシェードを埋めこんだ女ボディガードにひきずられ、擬験の大スターのアンジイや、伝説的ハッカーのボビイをも巻きこんだ大冒険に出発し、電脳空間の神秘をかいま見ることになるとは!全世界注目の作者が、疾走感あふれるシャープな展開で満を持して放つ、ファン熱望の《電脳空間》3部完結篇ついに登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
34
三部作の三作目とは知らずに読了。最初はコロコロ、変わる人物視点と世界観の把握に困惑しながらも次第に各視点を愉しんでいました。関連付けても面白かったのかしら。極道の娘で母の死後、心から笑えなくなり、ロンドンへ避難した久美子とボディ・ガードでアンドロイドのサリーとの関係が好きです。2014/06/28
里愛乍
33
再読して今更気付いた事。本書は近未来であるこの時代を進行形で描いているんだ、ということです。素子幽霊も電脳空間も、撮影連鎖も生体素子もこの世界では当たり前に存在している。だからそれありきで事は進み、彼らは喋り、行動する。私たち過去の読み手の存在なんて、彼らにとっては知ったこっちゃない、きっとお構いなしなんだ。だから私は彼らの会話から、ルビの打たれた言葉から、カッコ良すぎる文体から感覚を添わし、想像し、その世界に存在する努力をする。本書は三部作の中で最もそれが楽しめた。何度でも読みたくなります。2015/05/12
とも
23
スプロール3部作のトリ。今回は4人の視点で進行する。 ニューロのワクワク感やカウントのハラハラ感は薄い。これら2作の辻褄合わせというか落ち穂拾い的な側面が強く、少々こじんまりとしていると感じた。スケール感を期待すると肩透かしを食う。 とはいえこれはこれで面白い、カウントの後日譚として読むのがベターかも。ぐっと来るものがある。 2023/07/30
ハチアカデミー
20
人間とアンドロイド、現実と電脳空間が入り交じるサイバーパンク。複数化するスターや、映像として再現される母など、電脳空間に居座るハッカーなど、数々の物語設定に加え、視点人物がころころかわるというなんとも目まぐるしい作品。電子的な空間に神を見る可能性が提示されるが、その空間が進化し、人間が入り浸るようになれば、現実世界が再び再構築されるということなのか!? 状況説明そっちのけで暴走し、もはや文字まで動き出しそうなほどに熱量が高い。時間を置くと物語が掴みにくくなるので、一気読みをすすめます。2014/12/17
LNGMN
18
SFは知ったかをするに限る。ルビがフラれた意味深な単語には、「あぁ、あれね。当たり前だよね」くらいの感覚でやり過ごしていかないと、戸惑ってばかりで頁が進まない。なんなら酔っている時の方が分かっているかもしれない。運が良ければ半分くらいまで読み進めた頃に、その世界における何物なのかを知ることができる。と言いつつ、ギブスンは再読しても分からないだらけで、まだしばらく、わたしは知ったか読者のままのようだ。2021/12/31