内容説明
新米ハッカーのボビイ、別名カウント・ゼロは、新しく手に入れた侵入ソフトの助けを借りて電脳空間に没入していた。だが、ふとしたミスから“黒い氷”と呼ばれる防禦プログラムの顎にとらえられ、意識を破壊されかけてしまった。そのとき、思いがけないことが起こった―。きらめくデータの虚空のかなたから、神秘的な少女の声がきこえてきたのだ!ボビイは必死で電脳空間から離脱しようとするが…?SF界の話題をさらった『ニューロマンサー』と同じ世界を舞台にして、前作をはるかに上まわる衝撃的なヴィジョンを展開した、ファン待望のギブスンの長篇第2作登場!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猿吉君
75
スプロール3部作の第二弾、読了するのに通常の3倍の時間がかかるけど読んだ事への満足感もまた3倍あります。①1作目比で読みやすくなってはいるが3つの話が並行して進むという難しい事をやっているのでプロットにブレが出てる、惜しい。②わざとだと思いますが主人公全く魅力がない。③ターナー最高!④この作品も最後まで読むとなんとなくどんな話だったのかが判ります。④隠語が沢山ちりばめられているようですが全く気が付きませんでした。点数75/100→一度読んだだけでは評価してはいけないのかも、読み手を選ぶのは間違いない作品。2023/02/24
藤月はな(灯れ松明の火)
41
『ニューロマンサー』よりもエンターティメントがあり、読みやすかったです。権力者が不死性を求めていずれは滅びる肉体という器から電脳世界のミームを手段を選ばずに希求するようになる。しかし、電脳世界でも死は存在するのだ。そしてシステムが「生き物」そのものならば記憶の寄せ集めこそがその人格を形成する。ターナーがかっこいいです。でも浅はかなマルリイは好きになれなかったです。2014/07/09
とも
32
ニューロマンサーから7〜8年後。AIはある種の神として祀られている。人間は己の理解の範疇を超えるものを神と呼び、AIもしたたかでそんな人間の習性をうまく利用している。 前作を読んでる方が楽しめるが必修ではない。いくつかの出来事が断片的に語られたり、カメオ出演が楽しめたりくらい。読んでないほうがより幻想的に感じられ楽しめるかもしれない。 2023/06/30
猫丸
19
再読。手元の本は1990年三刷。じつに30年が経過したのだ。ギブスンの幻視した世界が半ば実現した2022年、千葉シティにサイバー都市は無く、日本のIT製品はもはや世界市場を席巻していない。どこかで世界線がズレたとしか思えない。長編第二作の本作、ジャックイン場面はメインではない。傭兵のターナー、美術商のマルリイ、新米ハッカーのボビイ、3人の視点から世界を描く。p.233「サムライ女と、千葉から調達してきたカウボーイと、こいつらも何かそういったものを追ってたっけ」で前作「ニューロマンサー」に言及している。2022/01/27
Kepeta
14
前作ニューロマンサーより読みやすくわかりやすい。その分、ニューロマンサーと比べると鬼気迫るものが薄れているように思える。一方で、世界観がわかりやすくなったぶん、ウイリアム・ギブスンの作家・ストーリーテラーとしての力量を素直に楽しめる。マトリックス上の意識体をヴードゥーの神々に当てはめる感覚は流石。本作の敵役ヨゼフ・ウィレクとコンロイは、スプロール三部作を通して最も敵役らしくて好み。2015/11/15