内容説明
人口問題に真摯な姿勢で取り組んだ力作SF。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
催涙雨
34
人口が70億へと膨れ上がり資源が枯渇した1999年のNY。自然はとうに朽ち水さえ不足し、宛のない人間には最低限の合成食料が配給されるだけ。消耗し尽くした無力な世界の上で貧困や犯罪に喘ぐ人々や荒廃したうら寂しい景観が目に浮かぶ様は人口爆発が起こった際のことを考えると他人事とは思えない臨場感がある。この期に及んで出産制限法に反対する勢力が存在し、何より一応は食料の配給も行き渡っているため人命を尊重しようとする表面的な倫理観は保たれている。これがもし現代に起こったとしたら、政府は人々に手を差し伸べるのだろうか?2017/10/25
ニミッツクラス
27
86年(昭和61年)の440円の青背初版。米本国66年。若い頃、73年のMGM「ソイレント・グリーン」を深夜映画で見て衝撃を受けた。本書がそれの原作なのだが、別物と言っても過言ではない…映画の、人の死体を食料として合成する脚本はSFサスペンスの金字塔の一つだ。本書の方はそんな話は欠片も無い。少年ビリーによる裏世界の顔役ビッグ・マイク殺しと、鬱々とした世相の中で内憂外患の私事に埋もれながらも捜査に精出す刑事アンディ。オチもダークで、これではとても映画にはならない。映画のノヴェライズがなぜ無い?★★★★☆☆2021/11/01
もりの
11
図書館に無かったので、映画「ソイレントグリーン」を代わりに。あり得そうなSFで怖かった。2016/11/22
tjZero
7
1966年に発表された、’99年の世紀末のN.Y.を描いたSF。人口の爆発により、食料は代用肉やサプリ。水や電気は配給制。原油は枯渇し、廃車がそこら中にあふれて貧民の住み家になっている。現実の”未来”はここまでひどくはならなかったな…と思いかけ、コロナ・ショック後の未曾有の経済危機の後ではありえない世界では無いな、と背筋が凍る思い。ヒリヒリとした焦燥感が湧いてくる、ディストピアSF。2020/04/18
えふのらん
5
水に食料、それに住居が不足した世界で殺人犯を追う刑事の物語。水食料の配給に並ぶ女たち、漏水を聞きつけて詰めかける群衆、断水で暴動を起こす農民、配給停止で暴れだす民衆には考えさせられるものがある。ただし、欠乏をテーマにしている割に空腹感や喉の乾きのディテールは不足気味で、これならオーウェルの放浪記やディケンズ、最近ならマッカーシーのザ・ロードなんかを読んだほうが得るものは多いのではないかとか思ってしまう。2017/08/31
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- 和書
- 続山のいで湯行脚