出版社内容情報
〔ヒューゴー賞受賞〕第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わってから十五年、世界はいまだに日独二国の支配下にあった。日本が支配するアメリカ西海岸では連合国側の勝利を描く書物が密かに読まれていた……現実と虚構との間の微妙なバランスを、緻密な構成と迫真の筆致で描いた、D・K・ディックの最高傑作!
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新聞書評(2013年3月~2014年12月)の本棚
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テレビで紹介された本・雑誌の本棚
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乱読太郎の積んでる本棚
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新聞書評(2017年)の本棚
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新聞書評(2018年)の本棚
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公開本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
538
これまでに読んだディックの小説とも、そしてまた通常の意味でいうSFとも大いに趣を異にする作品。無理を承知で言えば、ある種の稗史小説ということになるだろうか。小説の全体を構成するのは、第2次大戦で枢軸国が勝利した後の世界という仮構である。しかも、その世界のなかでは米英勝利の世界を描く『イナゴ身重く横たわる』といったフィクションが密かに流布しているといった、入れ子構造になっている。それにしても、なんともペシミスティックで絶望的な世界観が小説世界の統体を覆っていることか。極めて錯綜したディストピア小説だ。 2017/12/18
ケイ
171
もしこうであったら、という設定に驚き感心した。特にドイツにおいての後継者争いにおいてナチス高官たちのそれぞれの特徴はこのように判断できるのだというなど、逆に見てみれば見えてくる事があるのだと深く納得する。また日本人についての項では、媚びへつらって機嫌をとる者たちは、自分が機嫌をとる相手の趣味=弱点を把握していて、心の奥では馬鹿にしているのだと思わされた。「易経」の使い方は、理解しがたいところもあるが、これは日本人の立場から見るからで、欧米の人にはすんなり受け入れられる部分かもしれない。2017/03/29
かみぶくろ
138
枢軸国側が勝利した世界が舞台のIF物語。本物と偽物の区切りなんて実はない、ってことはもとより、そもそも本物と偽物っていう考え方自体がとても人間的な造形物だと思えた。ナチスっていう未曾有のヤバイ存在を改めて認識し直すって意味でも(その萌芽は案外日常に転がってるんじゃなかろうか)、歴史に残るのが納得の書。2016/12/17
まふ
129
初読。歴史改変小説。WW2の戦勝国がドイツと日本であり、日本が米国の西部を「統治」するという設定。「易経」の卦が活躍するが、一方で、日本人は礼儀正しく上品だが、黄色人種でチビでガニマタで、マネ上手なだけの、本当の人間ではなく利口で物覚えもいいサルであり…という「人種差別的な」ホンネ(?)も語らせている。「タンポポ作戦」で日本に水爆を投下してドイツが最終的な戦勝国となる計画あたりも、日本を「覇権国」とさせたくない「白人」の気持がにじみ出ているようであり、読後感は爽やかとは言い難かった。G1000。2023/05/19
ねりわさび
103
ヒューゴー賞受賞作。大戦でドイツと日本が勝利した後の世界を描いた小説。パラレル世界的解釈を含めて表現されており、唐突さを旨とした特殊な作劇構成をしている。田上とジュリアナの2人に焦点を当てれば物語を楽しむことができるかも。PKディックのファンならお勧めします。2023/10/29