感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
73
表題作「世界の中心で愛を叫んだけもの 」は期待に胸を躍らせて読んだのだが、良く分からなかった。もう一度読んでみたのだが、それでも分かったとは言い難い。理解できないところはそのままに受け入れて、その世界を感じるといった読み方で良いのかもしれない。秀逸なのは最後の「少年と犬」。先日、同タイトルの短編集『少年と犬』(馳星周)を読んだばかりだが、名前は同じでも全くテイストが違った。しかし、犬と人間の強い絆というものは共通していると言って良い。犬好きにはたまらない作品で、もちろんSF作品としても出色の出来だろう。2021/05/26
Aster
69
後半ちょっと飽きが来たけれど、こういうウルトラヴァイオレンスは嫌いじゃない。嫌いなら500ページも読めない笑 SFって何でもありなんだな。もちろんいい意味でね。表題作や宇宙規模の作品を見ているとそう思う。まえがきに書かれていることには反するけれど、ハーランエリスンをニューウェーブと表現することには同意してしまうかも、正直引き出しの数としては少ない。2020/02/29
bookkeeper
64
★★★☆☆ 初読。「世界の中心で〜」時空の果てで放出された悪意と狂気が、様々な時代と世界に波及していく。「101号線の決闘」公道での殺人レースが公認された世界で挑発された男の死闘。「星ぼしへの脱出」異星人の侵略を受けた植民星からの撤退戦の成否は、ケチな悪党の腹に埋め込んだ爆弾にかかっている。 題名の有名さの割にストーリーの知名度が低い表題作ほか、血と暴力、壮大なイマジネーションが炸裂する短編集。少しでも油断するとたちまち置いてけぼりになってしまうものも。分からん奴は放っておく感じ?こじらせの極致か。2020/02/04
藤月はな(灯れ松明の火)
53
初めてこの題名を見たのは中学校の図書室だった。なぜ、この題名に興味をひかれたかというとエヴァのアニメ最終話にこの題名が使われていたからだ。それでも琴線にしっくり、来なくて読まずに卒業して6年。多分、読友、アサギモ氏の感想がなければ読まなかったのかもしれない。そして表題作の突き放した様な視点でのヨハネ黙示録が現実となった世界観に鳥肌が立つほどの衝撃を受けたのであった。都市やセックスの描写もなぜか、暴力で流した血が乾く程の砂塵の吹く荒野のような印象を受けるから不思議だ。そこにあるのは紛れもなく、愛と孤独だった2014/02/12
oz
34
再読。「おれは世界中のみんなを愛している!」324人を理由なく殺した男は死刑執行の直前にそう叫んだ。…時空間的に超越した世界の中心、交叉時間。そこは外部の世界に向けて狂気を排出することで永遠の安寧が約束され、外部では排出された狂気のため殺逆が絶えない。住人である竜はその浄化システムに反撥し、結果その身ごと外部へと排出される。世界の中心で叫ばれた竜の愛は排出される狂気と混ざり、世界中へと伝播する…愛は自明の存在ではなく、暴力という暗闇の中でのみ儚く光る一つ星。それは他作品にも通底するエリスンのテーゼである。2013/02/25