感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kochi
21
南北戦争で北軍のグラント将軍と共に戦ったイノックは、メイン州の山深き故郷で暮らすうちに、異星の客の訪問を受け、銀河宇宙を縦横につなぐ中継ステーションの管理人として暮らすことに。年を取らないイノックを監視対象としたCIAの行動が、銀河宇宙が関係する大事件に地球を巻き込む・・・理知的で内省的な主人公が絶体絶命の危機に一発逆転!というSFファンに受けそうなストーリーで、それはそれで、古きSFを満喫。1964年のヒューゴー書受賞作だが、ハインライン、ノートン、ヴォガネット、ハバード作品を押さえての受賞も納得。2019/10/04
ニミッツクラス
9
77年の初版(340円)を読んだ。カバーにH賞受賞の文字がある。63年初出で、今読むとシマック風味が香り立って地味に面白い・・往時ならキューバ危機の世相や米SF界の成熟を反映して、全くの絵空事とは言い難い不安感を醸しただろう。主人公イノックはひょんなことから全地球・宇宙規模的な内憂外患を一人で背負い込むはめに。彼には地球人らしからぬ特殊な事情があるのだが、必ずしもキーパーソンではない。シマックらしい結果オーライの成り行き譚で、戦争を回避するために提案された荒治療の方法も未知数ながら興味深い。★★★★☆☆2015/04/30
海
4
名作。イノックは自分の生まれ育った土地、共に生きた人々を忘れられない。結局は人類の一員というアイデンティティを失うことなく異星人と交流するのである。これが人間の生き方というものだと私は思った。2022/04/21
construction
4
牧歌的な雰囲気の中でストーリーが進む。読後は優しい気分になれた。2021/05/01
小説大好き
4
シマック作品大好きです。フォークナー作品のように南部の雰囲気が強く出ており、風情があります。本作は派手な物語展開があるわけでもなく、舞台も固定されており登場キャラクターも少ないのに、とても豊かな作品に仕上がっていると思います。内省的で淡々とした人間賛歌の中に滅びの美学や決定的な別れを滲ませるような、シンプルなSF的アイデアに詩情深い筆致で肉付けしていく書き方に職人芸を感じます。今作が書かれた60年代は難解で哲学的なSFが爆増した時期ですが、その流れとはある意味真逆ともとれるアプローチで書かれた名作です。2021/01/05